【ちょっとよろしいですか 172】「温泉文化」がユネスコ無形文化遺産に登録される2030年までにするべきこと② 山崎まゆみ


 前回は「温泉文化」がユネスコ無形文化遺産登録に向けて前進したことによる効果と期待を記しました。

 宿泊施設で温泉に入浴できる温泉宿(旅館とホテルを含む)にとって、またとないチャンスが訪れます。

 今回は、「温泉文化」をリスペクトする気持ちで宿を訪れてくれるであろう世界中からのお客さんのために、これから何をしていくべきなのかについて、私なりの見解を述べます。

 現在、日本の温泉宿の魅力はまだ世界に伝わりきれていないように感じます。その理由は温泉宿の「定義」と「スタンダード」がないからです。

 まずは、未来の温泉宿の「在り方」について議論を深めていくことが重要です。

 具体的には、グローバルチェーンホテルに泊まるのと同様のサービス(クオリティー)を意識しつつ、温泉宿特有の要素を明確にするのです。

 その上で、温泉宿の皆さんが後世に残していくものを考えてみる。ハードとソフト両方で何を改善するかを検討してみてください。

 正確に言えば、何を変えて、何を変えないのかの線引きをするのです。

 要は、外国人が温泉宿に宿泊すると何を楽しめるのか。それは世界のスタンダードのホテルとはどう異なるのか。

 それらを言語化し、日本の宿を「ブランド」としてアピールしていく必要があります。

 私から、ぜひ改善の検討をお願いしたいのは「お客さんの多様性を受け入れるための食事提供の方法や施設改修」「自然災害を含めたいざという時の対処法とセキュリティーの確立」です。

 温泉宿のブランドを構築するのと同時に必要なのは、プロモーションの強化です。インスタ映えする写真の用意、海外の旅行会社やメディアの招致、多言語対応の環境整備は必須です。今から準備しておいた方がいいでしょう。

 温泉宿に限らず、温泉地の皆さんにお願いしたいのは、温泉の基礎知識を理解して、平易な言葉で説明できるようにしてほしいということです。

 地質学の観点から温泉が湧いてくる構造は非常に重要です。温泉は温度・成分・水の3要素で特徴づけられます。地中で温泉が流れる「断層」や「割れ目」などで地域特有の温泉が湧き出ます。また、日本列島には堆積岩、火成岩、変成岩など、さまざまな年代の岩石が分布しており、それらが個性が光る魅力的な温泉を作り出します。

 日本人が愛してきた温泉とその道のり(歴史)についても説明できるようにしたいですね。1300年も前の日本人の生活様式を書いた風土記に温泉の描写が出てきますから、絵図などを加えて解説できたら分かりやすいかもしれません。一通りの歴史を紙芝居にしても面白いかもしれません。

 このほか、温泉療法医にアドバイスをしてもらいながら「温泉と医学」の説明があっても良いかもしれませんね。

 この続きは、1月22日放送の観光経済新聞チャンネルでお届けします。この日、私は「温泉地の魅力発信の心得~他の温泉地との差別化や宿のユニバーサルデザイン化について~」と題してお話ししますが、質疑応答の時間を長く持ちたいと考えていますので、皆さんと議論の場とさせてください。多くの方のご参加をお待ちしております。

 =温泉エッセイスト

 
 
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