日本経済は相反するシグナルを発している。一方で、旅行市場はそうではない。
長年にわたるデフレの重荷を経て、日本は2024年に新たな局面へと入った。経済成長は緩やかだったが、その兆しは明確だった。17年ぶりの利上げ、株式市場の史上最高値更新、そして30年以上ぶりとなる力強い賃金上昇である。円安はその影響をさらに増幅させ、インバウンド旅行を一気に活性化させた。家計消費が2025年に入っても慎重な姿勢を保つ中でも、地方経済には確かな恩恵がもたらされた。
旅行業界にとって、これは「回復」から「再興」への明確な転換点となった。
Phocuswright の「Japan Travel Market Essentials 2025」レポートによると、総取扱高(gross bookings)は2023年にすでに2019年の水準を上回り、2024年にはさらに加速して前年比9%増の13.1兆円に達した。円建てでは勢いは非常に強い。一方、米ドル建てで見ると状況は異なり、成長は鈍く、2028年になっても2019年のドルベースの市場規模を回復する可能性は低い。結論は明白だ。インバウンド需要は急拡大しているが、市場の経済構造は変化している。
こうした背景のもと、日本は「観光が成長するかどうか」よりも、「どのように成長させるか」に焦点を移しつつある。

成長からガードレールへ
日本はいま、単に訪日客を呼び込んでいるだけではない。訪問者を「マネジメント」する段階に入っている。
文化地区の混雑、自然環境への負荷、交通インフラへの圧迫により、サステナビリティは理念から政策へと押し上げられた。国の観光計画では、分散化と来訪者体験が、成長目標と並ぶ柱として位置づけられ、明確な指標も伴っている。
かつての「奨励」は、いまや「実行」へと変わりつつある。
実効性を伴う政策
日本を代表する観光地のいくつかが、その方向性を示している。
新たな入域ルール、入場制限、料金や税の導入は、住民を守り、文化遺産を保全し、旅行者の行動を誘導するために活用されている。今後予定されているビザ制度、出国税、免税制度、デジタル渡航認証の変更は、より構造化され、データ主導型の観光マネジメントへの移行を示している。これは、質を損なうことなく成長を持続させるための設計である。
これらの施策が需要を減速させることはない。需要の「形」を変えるのである。
地方が主役へ
大都市への集中を緩和するには、需要と投資の再配分が不可欠だ。
鉄道延伸、航空会社へのインセンティブ、地域が連携したプロモーションによって、「日本旅行」の姿はゴールデンルートを越えて静かに広がっている。目的は、ピークを平準化し、経済効果を分散させ、体験価値を損なうことなく地方・二次的デスティネーションを主流へと押し上げることにある。
グローバル航空ハブとしての日本
インバウンド成長は、より大きな役割を強化している。それが、日本のグローバルハブとしての地位だ。
訪日客の増加は、運航頻度の向上や長距離路線の拡充を支え、東京をアジアと北米、さらにはその先を結ぶ乗り継ぎ拠点として一層強固なものにしている。ネットワークキャリアも新興勢力も路線を拡大し、インバウンド観光と国際的な接続性の双方に利益をもたらす「厚み」を生み出している。
なぜ重要なのか
日本の旅行市場は、単に規模が大きくなったのではない。より複雑になっている。為替動向、政策転換、サステナビリティへの圧力、航空戦略が同時に交差している。
PhocuswrightのJapan Travel Market Essentials 2025
本レポートは、これらの力がどのようにつながっているのか、そして日本で、あるいは日本に関して意思決定を行う企業にとって何を意味するのかを解説している。
【出典:Phocuswire 翻訳記事提供:業界研究 世界の旅行産業】




