【2026新春宿泊4団体トップインタビュー】日本ホテル協会 会長 䕃山秀一氏


䕃山氏

地方格差を解消、協会の”存在感”向上へ

 ――昨年3月、会長に就任された。

 当協会の117年の歴史で、関東以外を拠点とするホテルの会長は私が3人目。大阪を拠点とする私が会長に就くことで、協会の発信力や存在感が下がるのではないかとちゅうちょした。インバウンドは好調と言われるが、その恩恵は東京などの都市部に偏り、地方には追い風が吹いていないのが実情だ。国が掲げる2030年訪日外国人6千万人・旅行消費額15兆円の達成に向けて、地方との格差をどう縮めていくか―。協会にとって大きな課題であり、それが東京以外の会長が選ばれた背景だと思う。

 ――2025年の宿泊業界の回顧を。

 インバウンド需要は回復したものの、都市部と地方の格差は依然大きい。上半期の会員ホテルにおける外国人宿泊客の割合は平均で5割、京浜地区では7割を超えた。ADRは約2万6千円で前年同期比約3千円増、RevPARは約1万9千円で同約2400円増。京浜地区ではADRが4万2千円を超えたのに対し、外国人比率が3割程度の地方では1万6千円に届かないなど、格差が広がっている。

 人手不足については、特に調理部門の人材確保が深刻で、調理専門学校への入学者はコロナ前から半減。宿泊は年中無休でも、レストランは休業日を設けざるを得ないケースが目立っている。

 公正取引委員会から受けた一部高級ホテルへの警告については、真摯(しんし)に受け止めている。疑念を持たれるような打ち合わせは避けるべきだと会員に共有した。一方で、過度な萎縮から数字ではない運営上の課題まで情報交換を控える動きが出ている点は懸念している。
――協会事業を振り返ると。

 大阪・関西万博については、来場者の4割を地元在住者が占めたことから、会員ホテルへの直接的な効果は大きくなかったとみている。ただ、来場者に対し、関西から北陸まで含めた広域観光ルートを提案したところ、反応は良好で、広域で魅力を発信する手法の有効性を確認できた点は大きな収穫だった。今後は、全国にある12の支部と地域DMOが連携し、エリア全体の魅力を発信する取り組みを検討している。

 会員ホテルを紹介する公式インスタグラムの運用にも注力している。ホテル単体の宣伝ではなく、ホテル協会としてのブランド力の強化。今後、各地域の行事や、季節ごとの風景と組み合わせて発信し、地域全体の魅力の一つにホテルを位置付けていきたい。

 撮影はプロのカメラマンに依頼し、地方のホテルでは撮影できないレベルの動画や写真を掲載する。その動画や写真はそのまま各ホテルで利用可能にすることで、地方ホテルの発信力の強化につなげてもらうのが狙い。海外の方をターゲットに展開しており、フォロワー数は開設から数カ月で1.5万人に達している。将来的には30万人規模のアカウントを目指す。

 委員会活動では、SDGs委員会が中心となり推進する、食べ残しの持ち帰り運動「mottECO(モッテコ)」や、廃食油を会員ホテルから回収し、持続可能な航空燃料(SAF)の製造に活用する取り組みが、代表的な事業となっている。税制等対策委員会も活発に活動しており、業界が持続的に運営するために必要な補助金や税制関連の制度、支援策を精査し、提言としてまとめているほか、官公庁や国会議員からの問い合わせにも応じている。

 そのほか、広報誌「ホテルレビュー」をウェブサイトで無料公開し、業界課題に対する対応策やトレンドなどの情報発信を強化。各支部を通じて登録を促し、情報が届きにくい地方のホテルにも確実に行き渡る体制づくりを進めた。

 ――今年の業界展望と協会事業について。

 中国政府による訪日自粛要請については、訪日客の多くを東アジアが占める現状を踏まえると、地政学リスクの影響は常に念頭に置く必要がある。ホテル業は需要変動による収益の振れ幅が大きく、価格の上下動も激しい業種だ。こうした環境下において、業界内で情報を共有し、必要な行政支援を検討していく。

 その上で、今年は協会の存在感をいっそう高めていきたい。現場では日々の業務に追われ、周辺のホテルや地域、全国の動向が見えにくい。そのため、会員ホテルに業界動向を適切に発信し、人材研修の支援を強化する。

 また、政府による宿泊業界向けの補助金制度は多岐にわたるものの、地方の小規模ホテルにとっては、日々公募情報を細かく確認する余裕がなく、人手不足で対応しきれないのが実情だ。こうした課題に対し、協会では活用可能性の高い補助金情報を精査して発信するほか、外部コンサル会社と提携し、申請業務まで支援するサービスを前年度から開始しており、引き続き支援の充実を図る。

 ――会員増強はどのように進めていくか。
 
 ホテルの業態が多様化し、抱える課題もそれぞれ異なる今、当協会は1ホテルでは得られない幅広い情報を提供できる有益な組織だと自負している。活動内容を丁寧に発信し、理解を得られれば、会員は着実に増えていくはずだ。

 会員同士の相互研さんを促すため、昨年5月から会員ホテルの従業員が他の会員ホテルに割引料金で宿泊できる制度を設けている。また、「都心のホテルで学びたい」「一定期間出向して経験を積みたい」といった地方の会員ホテルの声に応える研修受け入れ制度も整備しており、これらの活用をよりいっそう促していく。

 ――読者のホテル経営者にメッセージを。

 万博を経て、日本のホテルが持つホスピタリティは改めて高く評価されている。設備産業でありながら収益性が低いため、大規模なリノベーションが難しいホテルも少なくないが、海外のお客さまの中には”レトロ感”を新鮮な魅力として受け取る人も一定数いる。全て改修できなくても、どこに、どの程度手を入れるべきかを見極めれば、ソフト面でも十分勝負できると考えている。日本のホテルが長く積み重ねてきた重みや風格は、外資系ホテルには出せない独自の価値だ。誇りを持って取り組んでほしい。


䕃山氏

観光経済新聞2026年1月1日号全紙面

 
 
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