2025年の観光業界は大阪・関西万博などで活発な動きを見せた半面、日中間の対立がインバウンド市場に影を落とした。26年の干支(えと)は60年に一度巡ってくる「丙午(ひのえうま)」という稀有(けう)な年である。太陽のような明るさと行動力を象徴する年といわれ、業界にとって言葉通りの年となることを願う。四つのキーワードを取り上げ、記者の独断と偏見で見通した。
「住んでよし」地域支える政策を
観光庁は、新しい観光立国推進基本計画(以下、基本計画)の策定を進めている。基本計画は国の観光政策を示す中期計画で、現在、策定中の計画は第5次となり、対象期間は2026~30年度。有識者で構成する交通政策審議会観光分科会で議論しており、3月ごろに国土交通相に答申、閣議決定を目指している。
第5次基本計画の策定に向けて、特に重視されているのが、「インバウンドの受け入れと住民生活の質の確保との両立」というテーマだ。背景には、過度の混雑やマナー違反といったオーバーツーリズムに対する社会の厳しい視線、あるいは、規制・管理の強化を伴う外国人政策の見直しといった政治の動きがある。
第5次基本計画の策定に関して観光庁の村田茂樹長官は過去の会見で、「インバウンドの受け入れをわが国の経済成長や地域活性化につなげていくことの意義に加え、さらなる受け入れに向けた国民の理解を得ることが重要であり、そのためにインバウンドの受け入れと国民生活の両立のための施策の徹底や、地方誘客のより一層の促進等により、観光の持続可能性を高める必要がある」とした。
インバウンド4千万人時代を迎える中、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を基本理念とした「観光立国」政策は、その意義を社会に改めて認めてもらう必要性にせまられている。観光立国推進基本法の施行から19年、「住んでよし」の部分に関しては、多くの課題があるということだ。
今の状況は、オーバーツーリズム対策が後手に回ったというだけではない。訪日外国人旅行者の滞在先が大都市部などに偏る一方で、旅行消費を通じた恩恵は地方部、全国津々浦々には十分及んでいない。少子高齢化、人口減少が進む地域にあって、「観光立国」政策による「住んでよし」の実現は道半ばといえる。
自動車産業に次ぐ水準に成長した輸出産業としてのインバウンドの重要性、恵まれた文化・自然資源を背景とした観光産業の成長性に疑う余地はない。求められているのは、地域の経済を潤し、地域の暮らしを豊かにする地域本位の「観光立国」政策の推進だろう。
観光立国の旗を降ろす必要はまったくない。成果を上げてきた「訪れてよし」の政策にとどまらず、「訪れてよし」が「住んでよし」につながるよう、人材育成、財源確保、制度設計において地域を支える政策の立案、推進に重きを置くべきだ。国・地方、政官民の知見を集めて、真の観光立国を実現したい。
【向野悟】




