駐日ヨルダン特命全権大使 ナーセル・シュライデ氏
駐日ヨルダン特命全権大使のナーセル・シュライデ氏に、ヨルダンの観光の魅力や日本との関係について聞いた。
――日本からヨルダンへの観光客の現状を教えてください。
「2019年には日本から約13,700人の旅行者がヨルダンを訪れました。しかし、コロナ禍で急激に減少し、昨年は4,200人程度までしか回復していません。2025年7月の時点で約3,000人が訪れており、徐々に回復傾向にあります」
――日本人にとってヨルダンはまだあまり身近な観光地ではないと思いますが。
「確かに日本の方々にとって、ヨルダンは主要な観光地ではないかもしれません。しかし、私たちの国には世界に誇れる多くの魅力があります。歴史的な遺産、文化体験、自然環境など、日本の旅行者にとって魅力的な要素が豊富にあります。日本市場の開拓は私たちにとって重要な目標です。今後さまざまな取り組みを通じて日本人の皆さんにヨルダンをより身近に感じていただきたいと考えています」
――ヨルダンの主な観光の見どころを教えてください。
「日本人観光客に最も人気があるのはペトラ遺跡、死海、ワディラムの砂漠です。特にペトラは2000年以上前に岩を彫って造られたナバテア人の古代都市で、新・世界七不思議の一つに数えられています。また、ヨルダンには35,000以上の考古学的遺跡があり、その多くが『オープンミュージアム』のように整備されています。北部の緑豊かな森林地帯から、死海という地球上で最も低い地点、そして火星の風景のように見えるワディラムの砂漠まで、わずか35分の移動で全く異なる景観を体験できるのもヨルダンの特徴です」
――死海について詳しく教えてください。
「死海は地球上で最も低い場所にある湖で、ミネラルを豊富に含んだ水が特徴です。そのミネラルは肌に良いとされ、世界中から多くの人が訪れます。湖の水は塩分濃度が非常に高く、人が自然に浮かぶことができるという不思議な体験ができます。死海周辺にはリゾートホテルや高級スパ施設も整備されており、泥パックや水中マッサージなどの本格的なウェルネスサービスを楽しむことができます」
――マイン温泉という温泉もありますよね。
「マイン温泉はローマ時代から知られる天然温泉で、現在も多くの人が温浴治療や入浴を楽しむために訪れています。日本には温泉文化がありますが、ヨルダンにも温泉があり、その温泉文化を日本の皆さんに知っていただきたいと思います。マイン温泉には極上のスパ&リゾート施設があり、泥パックや水中マッサージなど、さまざまな本格的サービスを提供しています。日本の温泉とは異なる体験ができると思います」
――ヨルダン渓谷の魅力についても教えてください。
「ヨルダン渓谷は聖書にも登場する歴史的に重要な場所です。ヨルダン川をはじめとする多くの川が流れ込む肥沃な地域で、その風景は四季によって様々に変化します。渓谷周辺には『ヨルダン川対岸のベタニア』と呼ばれるキリスト教の聖地もあります。ここはイエス・キリストが洗礼者ヨハネによって洗礼を受けた場所とされ、2000年にわたってキリスト教徒にとって重要な巡礼地になっています」
――ヨルダンとカタールの共同観光プロジェクトがあると聞きましたが。
「はい、現在カタールと共同でパッケージツアーの開発を進めています。日本は地理的に遠い国ですので、中東地域を訪れる際により充実した旅行体験を提供したいと考えています。カタールとヨルダンの両国の魅力を組み合わせることで、日本の旅行者に新しい価値を提供できます。ヨルダンはアラブ文化と歴史的遺産が魅力ですが、カタールは現代的な都市文化が魅力です。この対照的な魅力を一度の旅程で体験できるパッケージツアーを10日から14日間のプランで提供する予定です。さらに今後はエジプトも含めた3か国を巡るパッケージの開発も検討しています」
――ヨルダンを単独で訪れる魅力についても教えてください。
「ヨルダンだけでも3〜4週間、十分に楽しめる多様性があります。私たちの国は小さいながらも、7つのユネスコ世界遺産を有しています。また100カ所以上の観光名所があり、それぞれ独自の魅力があります。ヨルダンは『地球上で最も長い歴史を持つ場所の一つ』と言われており、考古学的な遺跡だけでなく、自然景観の多様性も魅力です。北部の緑豊かな森林地帯から南部の砂漠地帯まで、ヨルダンは単独でも十分に価値ある観光地です」
――中東地域の安全性について不安を持つ日本人も多いのではないでしょうか。
「確かに周辺地域の情勢から不安を抱かれることがあるかもしれませんが、ヨルダンは非常に安全な国です。過去25年間、国内で大きな事件は起きておらず、平和と安定を保っています。私たちは国連の平和維持活動にも積極的に参加しており、平和を守る国としての役割を果たしています。世界でも犯罪率が低く、セキュリティレベルが高い国として認められています。観光客を含むすべての訪問者に安全を保障できる環境を整えていますので、安心してお越しいただけます」
――日本とヨルダンの文化的な共通点はありますか。
「両国には多くの共通点があります。日本もヨルダンもアジアに位置し、長い歴史と伝統を持つ国です。お互いの文化や歴史から学ぶべき点が多くあります。日本の方々は旅行や食事を楽しむことを好まれると理解しています。ヨルダンはレジャー、文化、歴史のすべてを提供できる国です。また、ヨルダンでは日本料理が非常に人気で、多くのレストランが日本食を提供しています。私たちのホスピタリティは温かく、豊かな食文化も日本の皆さんに喜んでいただけるものと確信しています」
――日本人観光客向けに特別な取り組みはありますか。
「日本市場向けの特別なマーケティング戦略を展開しています。日本人の文化や嗜好に合わせた旅行パッケージの開発に力を入れています。マーケティングやセールスの観点だけでなく、コンテンツの面でも日本市場には特に注力しています。日本人の方々に豊かな体験を提供したいという強い思いがあります。訪れた方が家族や友人にも勧めたくなるような、本物の体験を提供することが目標です。SNSやインフルエンサーを活用したイメージ向上の取り組みも5年間の計画で進めています」
――観光以外の両国の関係強化についてはどうお考えですか。
「観光は両国の関係強化の重要な柱の一つですが、投資や経済協力の面でも関係を深めていきたいと考えています。ヨルダンはICT、ヘルスケア、テキスタイルなどの分野で投資機会を提供しています。日本企業との投資機会を促進する意向があり、グリーンファイナンスやeコマース分野での連携も期待しています。2030年までにGDPを2倍にし、100万の新規雇用を創出する経済目標を掲げており、日本との経済協力はその達成に重要な役割を果たすと考えています」
――最後に日本の旅行者へのメッセージをお願いします。
「ヨルダンは日本の皆さんを温かく歓迎する準備ができています。私たちの国には豊かな歴史、多様な自然、温かいホスピタリティがあります。ぜひヨルダンを訪れ、その魅力を直接体験してください。ヨルダンを訪れた方は誰もが、単なる思い出だけでなく、真の友情を抱いて帰国されます。日本の旅行業界との永続的なパートナーシップを構築し、双方にメリットをもたらす関係を築いていきたいと考えています。ヨルダンでお会いできる日を楽しみにしています」

駐日ヨルダン特命全権大使 ナーセル・シュライデ氏
【kankokeizai.com 編集長 江口英一】




