【2026新春宿泊4団体トップインタビュー】全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会 会長 井上善博氏


 

8部会の活動を推進、業界の底上げ図る

 ――2025年の宿泊業界を振り返ると。

 訪日外国人旅行者数が過去最高を記録する勢いで伸びるなど、外部環境としては宿泊観光業界には追い風が吹いたのは間違いない。

 ただし、その大多数が東京、大阪、京都などの大都市圏に集中し、また、大阪・関西万博の開催も地方周遊を促進する結果とならなかったなど、引き続き、多くの地域ではまだインバウンドの恩恵を十分に受けられていない状況にある。7月5日に大災害が起きるという風説により夏に日本への旅行を控える動きが見られるなど、インバウンドにはリスクがつきものであることも思い知らされた。

 また、物価高騰には業界全体が苦しめられ、高付加価値化により単価アップに取り組む旅館・ホテルもあるが、総論としては、費用の上昇分を販売価格になかなか転嫁できないでいる。

 ――全旅連の25年の事業について。

 会長として2期目を迎え、6月の総会において、これまでの委員会を「部会」へと改称し、八つの専門部会を設置した。常務理事の中から各部会の担当を選任し、全国各地から若い、優秀なメンバーを集めて活動を開始した。8月末には部会に関わるメンバーを対象に研修会を開催し、各部会担当の常務理事から活動方針を示してもらった。私からは「各部会が取り組む課題を明確にし、組合員の皆さまに有益な情報や成果を提供できるよう活動していただきたい」とお願いした。

 夏以降は各部会が会合を重ね、宿文化の普及啓発・業界の地位向上、外国人労働者の受け入れの推進等による人手不足問題への対応、DX化の推進、キャンセルやノーショウへの対応、カスタマーハラスメントへの対応など、業界が抱える課題解決に向け精力的に動いている。

 26年度の総会では、一定の成果報告ができるだろう。

 ――喫緊の課題である業界の人材確保について。

 全旅連など宿泊4団体が宿泊業技能試験センターを設立し、全旅連の西海会長代行を理事長として、外国人の在留資格取得に必要な試験を行うとともに、外国人人材確保に関する諸課題の解決に取り組んでいただいている。

 全旅連としても、観光庁とともに、海外で現地の学生らに日本の宿泊観光業についての説明、各宿泊施設とのマッチングなどを行うジョブフェアを開いている。私も何回か現地に行かせていただいたが、現地に行くことで実際の雇用までつながるなどの成果があがることを目の当たりにした。今後はより多くの旅館・ホテルの方々にご参加いただきたい。

 ――26年の宿泊業界の展望を。

 10月に高市新政権が誕生したが、新政権下で策定される観光立国推進基本計画がどのようなものになるのか注目している。中長期的なトレンドとしては、インバウンドは今後も増加基調をたどることが予想されるが、やはり、地方への誘客を進め、それをいかに地方の持続可能な成長につなげるかが重要である。また、わが国を含め世界各国で高齢化が進む中、国内客・インバウンド客共に増加が見込まれる高齢者等の旅行需要を喚起し、ユニバーサルツーリズムの普及・定着を図ることも重要である。

 国際観光旅客税の値上げが取り沙汰されているが、これらの財源を、プロモーション等の一過性のものだけではなく、宿泊施設のソフト・ハード両面での高付加価値化への取り組み、さらには地域に残る廃屋撤去などの地域の価値そのものを向上させる取り組みに活用していくことが必要なのではなかろうか。

 こうした政府の動きとも歩調をしっかり合わせ、宿泊観光業界は観光立国・日本や地方創生の推進役としての自覚を持ち、業界としての底上げを図っていかなければいけない。

 ――26年の全旅連事業について。

 八つの専門部会の活動をさらに推進し、宿泊観光業が抱える課題解決に取り組み、業界の底上げを図ることが重要である。また、より多くの組合員に積極的に業界活動に参加していただき、皆の力で宿泊観光業界を若い方々からあこがれる産業にしていきたい。

 青年部やJKK(女性経営者の会)ともしっかりと連携を図っていきたい。特に、青年部については、青年部で活動した経験を持ちながらも、その後業界活動から遠ざかっていた有能な方々をもう一度全旅連の活動に誘い、一緒に活動していくことで、全体の活性化を図りたいと考えている。

 ――「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産登録に向けた取り組みについて。

 目標とした100万筆には届かなかったものの、67万筆という多くの署名を集めることができた。宿泊・温泉関係の皆さまの期待に応えるためにも、30年の登録をぜひとも実現させたい。

 ユネスコ登録は温泉地を抱える地域の活性化につながる。地方への訪問客が増え、地域経済に大きな影響を及ぼすだろう。世界的に認知されることは、そこで働く人々が自信と勇気を取り戻すきっかけにもなる。

 ――本紙読者の旅館・ホテル経営者に向けてメッセージを。

 わが国において、観光が成長産業であることは疑いようのないことである。その中でわれわれ宿泊産業が稼げる産業となり、それぞれの地域の成長のエンジンとなっていかなければいけない。

 また、近年は能登半島地震のような大きな地震、風水害など災害が多発している。

 こうした中、各都道府県組合ははそれぞれ都道府県と災害協定を締結しており、非常時の被災者支援、被災者の受け入れを今後も積極的に行い「公的インフラ」としての役割を果たしていかなければいけない。

 宿泊観光業には課題もたくさんあることも事実であるが、全国の旅館・ホテルの経営者の皆さんと共に歩み、明るい未来をつかんでまいりたい。


井上氏

観光経済新聞2026年1月1日号全紙面

 
 
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