【2026新春特集】外資OTAトップ座談会 Booking.com × Trip.com × Expedia


(左から)木村氏、高田氏、ロドリゲス氏

 宿泊施設のインバウンド誘客では必須の存在であるグローバルOTA。その最先端テクノロジーとAI対応による使い勝手は、国内ユーザーも魅了している。エクスペディアの木村奈津子氏(エクスペディアグループ リテール日本統括ディレクター/エクスペディアホールディングス代表取締役)、トリップ・ドットコムの高田智之氏(Trip.comインターナショナルトラベルジャパン代表取締役社長)、ブッキング・ドットコムのルイス・ロドリゲス氏(Booking.com日本代表)の3氏にお集まりいただき、各社の現状と今後などについて語っていただいた。司会は、kankokeizai.com編集長の江口英一。(東京都中央区のロイヤルパークホテルで)

インバウンドの回復鮮明

 ――2025年はどのような年でしたか。

 木村 当社の主要ブランドであるExpedia、Hotels.com、Vrboは、世界中で多くの旅行者に利用され続けている。プラットフォームには1日あたり1千万件を超える訪問、月間10億件以上の検索が集まり、グローバル規模で活用されている。旅行者が何度でも利用したいと思える、シームレスでストレスのない旅体験の提供に注力した。

 広告事業も好調で、第3四半期には旅行コンテンツエージェンシー「Beautiful Destinations」との業界初のパートナーシップを発表した。SNSが旅行のインスピレーション源として重要性を増す中(61%の旅行者が最も影響を受けると回答)、広告パートナーが高品質な旅行コンテンツを迅速に制作できるようになった。

 また、ChatGPT AgentやMicrosoft Copilot Actionsなどのローンチパートナーとなり、旅行者がAIを使った会話型のインスピレーションから予約までをシームレスに実施できるようになった。

 日本市場では、インバウンドで日本が世界的に注目を集めている。当社の旅行トレンドレポート「Unpack’26」では、日本が2026年の人気旅行先の一つと位置付けられた。旅行者はガイドブックをなぞるような旅行から、その土地のスポーツ・文化・自然を楽しむ体験型へシフトしている。特に沖縄は「2026年の人気旅行先」ランキングで2位となり、人気が前年比71%増加した。東京は25年第2四半期の予約された部屋数(NRN)ランキングで、ラスベガスやニューヨークを抜き1位となった。

 アウトバウンドも力強く回復しており、日本発の航空券予約数は前年比26%増(Q1~Q3)を記録。フライトとパッケージ商品も2桁成長を見せた。ハワイ、グアム、韓国など人気旅行先への統合型キャンペーンを展開し、日本人旅行者の海外旅行を後押しした。


エクスペディアの木村奈津子氏

 高田 Trip.com Japanにとって「事業の広がり」「ブランド浸透」「顧客基盤の強化」が同時に進んだ1年だった。インバウンド需要が本格的に回復する中、旅行プラットフォームとしての強みを発揮し、グローバルでも日本でも高い成長を実現した。グループ全体では第2四半期時点で売上高4千億円、前年比16%増と堅調に推移している。

 日本市場では、フライトからホテルへの導線強化やUIUX改善により、各カテゴリで2桁~3桁成長を記録。特にデジタルネイティブ世代のアウトバウンド利用が顕著に増えた。田町の自社コールセンターや世界中の日本語サポート体制が高品質な顧客体験を支え、Trustpilotでは4.4という高評価を獲得。アプリから無料でかけられるIP電話サービスもリピーター獲得に寄与した。1万人規模の24時間対応カスタマーサポートは当社の強力な競争優位性となっている。

 大きな進展として、大阪オフィスをグラングリーンへ移転・拡大した。スタッフを増員し、西日本の拠点としてだけでなく、パートナー連携のハブへと進化した。

 また、G―Dragonのチケット販売や「ポケモン発見大作戦」での独占販売など、ユーザー接点を拡大する取り組みが相次ぎ、ブランド浸透がさらに進んだ。関西国際空港での広告展開や新CM「世界は、すぐそこ」の公開を通じて、日本市場への長期コミットメントを強く打ち出した1年でもあった。

 ロドリゲス 世界的に堅調な需要が続いた1年だった。Booking Holdingsは25年第3四半期に3億2千万泊を販売し、前年比8%の成長を達成した。特にアジアは2桁台前半の成長を維持し、当社の成長をけん引する主要な役割を果たした。その中で、日本が世代を超えた旅行先として人気を集めていることを強く感じた。

 この傾向に対応し、当社は主要都市だけでなく地方へのインバウンド需要の促進にも力を入れ、AI技術を取り入れた。Alipayとのパートナーシップを開始し、多様な支払い方法を提供するとともに、日本のパートナーからの需要に応えるため、旅館パートナー向けの子ども料金設定機能や新しい広告ソリューションなどを導入した。

 ホテルの拡大と並行して、旅館やバケーションホームの提供も強化し、多様化するニーズに合わせたユニークな宿泊体験の提供に注力した。その一例が「Booking.com 公式民泊ホストアドバイザー」プログラムだ。日本の民泊市場全体の活性化と発展を共に推進することを目指している。

  ――2026年はどのような年にしたいですか。

 木村 26年は「B2CとB2Bの二つのエンジン」で成長を加速する年になる。この組み合わせが引き続き当社の基盤であり、強みだ。アジア太平洋地域は世界の旅行業界におけるさらなる成長の中心であり、33年までに世界の旅行支出の40%を占めると予測されている。

 また、AIを使った次世代体験を加速させていくつもりだ。旅行計画においてAIは必要不可欠になりつつあるが、当社の調査では、旅行者はAIが作ったコンテンツを評価しつつ、同時に「人間らしさ」を求めていることがわかった。また、動画の重要性も高まっており、動画コンテンツは画像のみに比べて約3倍の影響力があることも判明している。

 新たな需要の創出として、インバウンドでは日本の世界的な需要が過去最高水準となる中、この成長を健全に維持し、地方や文化体験への誘導を強化する。アウトバウンドでは、さまざまなツールとインサイトを活用し、日本の旅行者の海外旅行を後押しする。

 パートナーシップと持続可能な成長も重要だ。26年は、ホテル、航空会社、観光局、デスティネーション開発に携わる皆さまの持続可能な成長を支援し、人気観光地への需要集中を分散させ、次世代の旅行先を築くことで、業界におけるリーディングポジションをさらに確立していく。

 高田 25年に構築した「認知」「信頼」「連携」をさらなる成長フェーズへと導く1年にしたい。OTAの都合を優先せず、現地の商習慣を尊重し、課題には即時に真摯(しんし)に向き合う姿勢は、当社が日本市場で長期的に成長するための基盤であり、26年も変わらない中心価値だ。その上で、「AIによる旅行体験の質的向上」と「パートナーシップの横断拡大」を2本柱とする。自社AIと外部モデルを組み合わせたハイブリッド型AIにより、旅行者が直面するハードルを解消する。

 AIでは、TripGenieを中心に新しい旅行スタイルを定着させる。17言語対応の音声同時通訳、メニュー翻訳、スマートフォンをかざすだけでガイドが表示されるリアルタイムガイド、AIレコメンドランキング「Trip.Best」などをさらに進化させ、日本から世界へ安心して旅に出られる環境を強化する。

 パートナー連携は、航空・鉄道・ホテル・ライブエンターテインメントからさらに範囲を横断的に拡張する。フランスTGVの販売を開始し、26年はアジア展開も本格化させる。Live Nationとの提携でライブツーリズムという新しい旅行需要を創出し、自治体連携も強化して日本の魅力を国内外へ訴求していく。

 ロドリゲス 世界の旅行者たちの超パーソナライズされた旅への渇望と需要に合わせ、さらにユニークな体験を提供していく。当社の26年トラベル・トレンド予測では、世界の旅行者は画一的な旅行から、自身の感性や願望に根ざした旅へと移行しつつあることが示されている。重要となる要素は「テクノロジー×感情×個性」だ。

 76%が空想旅行に着想を得たり、リトリートや自然の中で趣味に没頭する目的地の訪問に興味を示している。当社が培ってきたAI技術とサービスを通じて、旅行者の願望を具体的な体験に変換し、目的地へと導いていく。

 日本には、こうした旅行者のトレンドに合致する多くの“本物の隠れた魅力”が存在する。インバウンド旅行者を地方へ導き、旅館、温泉、郷土料理といった日本の独自の文化体験を多言語コンテンツやAIを通じてより広く世界に届けていく。「RYOKAN」に続き、「ONSEN」も広めていきたい。同時に、地方や中小規模の宿泊パートナーが公平に競争し成長できるグローバルな舞台を作るためのプラットフォーム提供も進めていく。

AIの活用など戦略推進

 ――AI対応やインバウンド、各種旅行トレンドなどについてお聞かせください。

 木村 AIは旅行の発見・計画・予約を変革しているが、旅行者は「AI+人間の知見」を求めている。調査では41%が「AI生成コンテンツは人間の入力と組み合わせるのが良い」と回答した。AIに最も期待する機能は、予算管理(24%)とパーソナライズされた旅行計画(19%)だ。日本では、日本語に対応した対話型の旅行プランニングや、パートナーが適切なオファーを届けられるツールに注力している。

 インバウンドでは、旅行者は観光名所を巡る旅から、より深い文化体験や地域とのつながりを求めるようになっている。日本の相撲は26年に参加したい「スポーツツーリズム」体験の1位にランクインしており、Z世代やミレニアル世代に人気だ。スポーツ関連旅行は世界の観光支出の約10%を占め、32年までに1.3兆米ドル規模に成長する見込みだ。

 また、コンテンツは旅行の意思決定に大きな影響を与え、71%が「動画が選択に影響する」と回答した。これは静止画像の約3倍の影響力だ。映画のロケ地を訪れる「ロケ地巡り」や、農場滞在などの自然体験(91%)といった新たなトレンドも生まれている。

 高田 発信したいテーマは「AI」「インバウンド」「旅行トレンドの変化」の3軸が中心だ。AI戦略は、自社AI「TripGenie」と外部モデルを組み合わせたハイブリッド型を採用している。セキュリティを自社で保持しつつ、旅程最適化から予約変更まで深く統合し、「予約完了までつながるAI体験」を提供できる点が最大の特徴だ。

 インバウンドはアジア圏中心に回復が継続し、地方エリアへの興味も拡大している。アニメ・ライブ・体験コンテンツの需要も伸びている。海外旅行では短期・近距離が人気で、「Trip.Best」を中心に新たな渡航先を提案し需要喚起を続ける。

 国際的トレンドとしては、サステナブル旅行や列車旅行の魅力を発信する。また、エンターテイメントツーリズムも重要だ。APAC旅行者の63%が“コンサート目的で旅行経験あり”という調査結果もあり、K―POPやJ―POP公演のチケット取り扱いを拡大している。これらのイベントと連動した宿泊・観光商品も大幅に伸長している。

 ロドリゲス 超パーソナライズされた旅行者のニーズとBooking.comのAI技術を結びつけ、日本における究極の旅行体験を実現する存在になることを目指す。当社のレポートによれば、世界の89%(日本の83%)のアジア太平洋地域の消費者はAIの利用に非常に肯定的で、93%が今後の旅行でAIを利用したいと回答している。

 また、当社の持つグローバルなリソースを生かし、宿泊パートナーにとってより一層重要な存在となることを目指す。変化を積極的に受け入れるため、パートナーとより密接に連携しながら取り組んでいく。


ブッキング・ドットコムのルイス・ロドリゲス氏

 ――25年に旅行した場所とその感想は。

 木村 国内旅行が中心で、四季折々の風情を満喫した。特に印象深かったのは、ゴールデンウイーク直後に出かけた人生初のクルーズ旅行だ。母と保育園児の娘との”3人女子旅”で、釜山と佐世保に寄港するショートクルーズに挑戦した。外国船のため船内は海外旅行気分が味わえ、キッズルームやさまざまなイベントもそろい、飽きることはなかった。広大な海を眺めながら過ごす時間は、この上ないぜいたくだった。クルーズでのワーケーションも素敵だと感じた。今年は、十分に楽しめなかった釜山への“リベンジ”として、改めて女子韓国旅に挑戦したい。

 高田 2月、7歳の娘とともに石川県・能登半島を訪れた。被災地域を巡り、被害の爪痕を目の当たりにし、胸が締め付けられる思いだった。現地の方々と話すと、悲観的な姿勢ではなく、「普通に観光に来てほしい」という強く前向きな気持ちがあった。OTAとしてできることは、国内外のお客さまを現地へ送り届けること、現状を正しく伝え、情報を発信し続けることだと強く感じている。被災地にとって最もつらい状況は「忘れられてしまうこと」だからだ。現地で購入したランプの光や、輪島の朝市で購入した「能登は、ひとりじゃない」というステッカーが観光業に関わる1人として、Trip.comが日本の観光へ貢献をしていくという気持ちを強く後押ししてくれている。

 ロドリゲス 奄美大島を訪れた。海は驚くほど透明で、亜熱帯の自然が美しく広がっていた。特に印象に残ったのは、伝統的な島唄、鶏飯などの地元料理、そして地域の方々の温かさだった。この旅は、日本の本質的な側面―素晴らしい景観、歴史、温泉や旅館文化、おいしい食べ物、温かいおもてなし―を思い起こさせてくれる素晴らしい経験だった。主要都市を超え、日本各地の多様な魅力をもっと広く発信する必要性を感じた理由の一つでもある。

日本の観光振興に提言

 ――AIの活用やインバウンドのトピックスについて、また地域振興や地方への誘客について、皆さんが進めていらっしゃることについて、インタラクティブにお話しいただきたい。

 木村 当社はテクノロジー会社としてAIにかなり投資を続けている。旅行者の観点で言えば、ChatGPTの中でExpediaと入れていただければ、そこから旅行先を決めるところから予約まで全て完結できるような展開をしている。現在6カ国で展開しており、日本語も準備中だ。特にアメリカを中心に利用が増えている。

 また、日本のお客さまに特に好評なのが「プライストラッカー」機能だ。価格が変動しやすいフライトで、気になるフライトを登録しておけば安くなった時に通知が来る。時間の節約にもつながる。サプライヤー向けには、需要予測や競合の価格設定などのデータに基づき、収益が最適化できるような価格設定の補助サポートにも力を入れている。

 高田 われわれにも「プライスアラート」という同様の機能がある。旅行者向けで特徴的なのは、チャットボット「TripGenie」だ。日本語を含む17言語に対応しており、音声同時通訳機能も実装された。スマホを間に置けば、異なる言語間でインタラクティブに会話ができる。

 「リアルタイムガイド」機能は、例えば金閣寺などにスマホをかざすと、画像認識して日本語でガイドを始める。メニューを写真に撮ると、それが何の料理なのかまで踏み込んで翻訳する機能もある。AIを使った独自のランキング「Trip.Best」では、ホテルやレストランを評価し、そのまま予約まで動線を引いている。

 旅行相談やホテル比較といったコンシェルジュのようなサービスも提供している。さらに、他の航空会社のサイトで予約したフライトのスクリーンショットをアップロードすれば、AIが情報を読み込み、その情報をわれわれのデータベースと紐(ひも)づけ、遅延やゲート変更などをリアルタイムでプッシュ通知する。初めて海外に行く方や、当日の急なフライト変更に対して、弊社としては旅行者に最大限のサポートを日本語で行い、少しでも旅の経験を豊かにしてほしいという思いを商品開発に生かしている。

 パートナー向け、特に日本のインバウンドにおいては「ローカライゼーション」が重要だ。AIの発達により、日本の旅館などの正しい情報を、海外に向けてその国の言語でしっかりと発信できるようになった。これは地方の魅力を伝え、オーバーツーリズムの解決にもつながる。


トリップ・ドットコムの高田智之氏

 ロドリゲス Booking.comでは、オープンAIだけでなく、対話型エージェントAI「スマートメッセンジャー」や「AIボイスサポート」「AIレンタルヘルパー」「フライト検索サマリー」なども活用し、旅行者とパートナーをサポートしている。

 日本の地方にはまだまだたくさんの魅力がある。現在の代表的な日本国内の旅行先だけでなく、日本全国にある隠れた名所や温泉、旅館、そして祭りや四季折々の自然といった地方の魅力を発信していくことが重要だ。例えば「富士山が見える温泉はありますか」と聞けば、AIが推奨してくれる。インバウンドのお客さまは旅館や温泉の体験に興味があるが、それがどういうものかよく分かっていないことが多い。AIの力で、そうした本物の日本体験へと導くことができる。

 ――皆さんは日本を世界にプロモーションする努力をされてきた。特に地方誘客について、最近の取り組みは。

 木村 オーバーツーリズムが課題となる中、知られていない地方の認知を高めたい。SNSの影響は非常に大きく、インフルエンサー施策に力を入れている。最近「クリエイターズプログラム」という仕組みができた。世界中のインフルエンサーが自身のチャンネルで日本の地方を訴求するとともに、われわれのサイト内でも彼ら自身の生の声で発信してもらう。アフィリエイト型モデルで、予約につながれば収益を分配する。

 また、自治体との連携では、一つの県や市だけでなく、例えば「世界遺産を巡る」といったテーマで複数の自治体を横断するキャンペーンの方が、旅行者にとっても魅力的で、効果も高いと考えている。

 高田 外資系OTAの役割として、地方自治体やKOL(インフルエンサー)との連携は非常に重要だ。われわれが最近注力しているのは、地方のオフライン情報のオンライン化だ。日本の旅行会社が培ってきた深い知見や、紙媒体に眠っている価値ある情報をオンライン化し、多言語で発信していく。われわれは2年前にJTBと合弁会社「JTB Inbound Trip」を設立したが、そうした国内エージェントが持つ情報をデータベース化し、オンラインに載せることで、情報の量と質を充実させ、自然に人の流れを地方へ作っていくことが重要だと考えている。

 ロドリゲス AIは地方にインバウンドを導く強いツールになる。アメリカを中心にわれわれは大型のスポーツイベントのスポンサーシップなどを通じて日本の認知度を上げ、旅行のインスピレーションを与えている。旅行者の関心はパーソナライズされた体験にシフトしており、「本物の日本」を体験してもらうことに注力している。

 しかし、インバウンド客には誤解も多い。私の母は「温泉」を「共同浴場」のようなものだと思っていた。旅館の食事についても、インバウンド旅行者が期待するものと旅館が提供するものに不一致があるというフィードバックを受けることがある。旅館に泊まることは食事も含めて一つの体験なのだということや本質のストーリーを、正しく伝える啓蒙活動が重要だ。

 ――温泉文化が無形文化遺産に登録されれば、さらに注目が集まると思うが、海外の方には文化的なバリアもあるのではないか。

 木村 人前で裸になることに抵抗を感じる方は非常に多い。海外の方にもっと温泉を楽しんでもらうために、受け入れる旅館側で何か工夫は必要なのだろうか。

 ロドリゲス 初めての体験では恥ずかしさがある。まずは家族風呂のようなプライベートな温泉から体験してもらうなど、段階を踏むのが良いかもしれない。1、2回体験すれば、その魅力に気づき、リラックスできるようになる。

 高田 25年、温泉の検索数は前年より20%増えており、需要は確実に上がっている。個人的には、温泉は海外に過剰に迎合するべきではないと思う。よりオーセンティックである方が価値が高い。もちろん、タトゥー客向けのステッカーを用意するなど、間口を広げる工夫は大事だが、本来の日本の温泉のあり方を続けていくべきだ。

 ――インバウンドが好調な一方で、アウトバウンドの促進も課題だ。

 木村 インバウンドとアウトバウンドのバランスは非常に重要だ。海外に行く日本人が減ると、異文化への理解が乏しくなり、結果的にインバウンド客を受け入れる際のフリクションにつながりかねない。

 高田 全く同意見だが、コロナを経て日本の良さを再発見した人も多い。国内旅行は質が高く、円安もあって魅力的だ。データを見ると、アウトバウンドで動いているのはコロナ前から海外旅行に行っていた層が中心で、新規の旅行者が増えていない。特に20代は活発だが、それ以降の世代が動いていない。シンプルに、価格が高いのだと思う。

 木村 為替はどうにもならないが、K―POPやスポーツ観戦など、自分の「推し」のためならお金をかけるという人は増えている。行く理由が明確であれば、そこに投資する。そうしたコンテンツや理由付けが非常に重要だ。

 高田 われわれはLive Nationと提携し、アジア各国のコンサートチケットを販売しているが、海外から多くの人が来るし、日本からも行く。為替を超える価値、個々人の好きなものを追いかける旅の需要を創出していくことが、今後の鍵になる。

 ロドリゲス 日本人が海外に行くときも、その国でしかできない本物の体験を求めている。韓国や台湾は、文化的な魅力があり、初めての海外旅行先としてプロモーションしていくことで、需要を喚起できると考えている。需要をただ待つのではなく、仕掛けて作っていくことがわれわれの役割だ。

観光経済新聞2026年1月1日号全紙面

 
 
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