JTB総合研究所は12月17日、2025年10月度の観光統計及び年末年始の旅行動向を発表した。10月の訪日外客数は前年同月比17.6%増の約390万人。日本人の海外渡航者数も8.3%増と回復基調が続く。また、同社が実施した調査では、スマートフォンでの旅行商品予約が全体の7割に達し、旅行情報収集では生成AIの利用が急増していることが明らかになった。
訪日客が390万人超、出国者は124万人に
日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2025年10月の訪日外客数は3,896,300人で前年同月比17.6%増となった。2025年の累計では35,547,199人に達している。
一方、法務省出入国在留管理庁の速報値によると、同月の日本人出国者数は1,243,575人で前年同月比8.3%増。ただし2019年比ではまだ25.2%減と、コロナ前の水準には回復していない。2025年の累計出国者数は12,100,810人となっている。
国・地域別の日本人出国者数を見ると、韓国が316,776人(前年同月比2.0%減)と最多。次いでスペインが83,881人(同15.6%増)、タイが73,806人(同0.3%減)と続く。特に伸び率が高かったのは香港の36.1%増、ハワイの16.0%増だった。
旅行情報収集、生成AI「ひとり勝ち」の状況に
JTB総合研究所が発表した「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2025)」によると、旅行情報の検索手段として「生成AI」の利用が急増。昨年注目された地図アプリや動画投稿サイトの利用は微減したという。
SNSの利用状況では、「LINE」「YouTube」「Instagram」「X」の順に利用率が高く、昨年4位だった「Instagram」が「X」を抜いて3位に浮上した。また「BeReal.」は29歳以下の女性の利用が10%を超えている。
スマートフォンでの旅行商品予約・購入割合は引き続き増加し、7割に達した。調査したすべての旅行関連項目で予約購入割合が増加していることも明らかになった。
年末年始の旅行者、前年比2.5%増の3,987万人に
同社が発表した2025年12月20日から2026年1月5日までの年末年始の旅行動向によると、1泊以上の旅行に出かける総旅行人数は3,987万人(前年比102.5%)、総旅行消費額は1兆9,858億円(同108.4%)と予測されている。
内訳を見ると、国内旅行は旅行人数が3,886万人(前年比102.0%)、平均費用は44,000円(同102.3%)、旅行消費額は1兆7,099億円(同104.3%)。
海外旅行は旅行人数が100万人(前年比131.5%)、平均費用は275,000円(同108.7%)、旅行消費額は2,758億円(同142.9%)と大幅な増加が見込まれている。
観光を「統合型産業」として再定義する提言も
JTB総合研究所の山下真輝フェローは、「観光が日本の成長戦略であるべき理由」と題したコラムで、観光を外貨獲得、地域産業、人材育成を支える「統合型産業」として捉え直し、成長戦略の中枢に位置づけるべきだと提言している。
また、同社客員研究員の宮口直人氏は「旅館経営におけるDX活用とその未来」というコラムを発表。コロナ後の需要回復に伴い、インバウンド対応や人手不足に直面する中小旅館におけるDX導入の現状と課題、AI活用による業務改善の可能性について考察している。




