ブッキング・ドットコム・ジャパン株式会社は12月17日、Statistaとの共同レポート「宿泊業界の最新動向 日本版 2025」を発表した。過去の業績を好調と回答した日本の宿泊施設は76%と前年比13ポイント増。今後6か月以内に投資拡大を計画する事業者は59%にのぼる。円安やインバウンド増加を追い風に、AI活用や人材育成にも積極的な姿勢が鮮明となった。
3年連続で上昇する景況感
日本の宿泊業界の景況感は3年連続で上昇している。過去の業績を「良い」または「非常に良い」と評価した回答者は2023年の56%から2024年は63%、2025年は76%まで上昇した。現在の経済状況についても73%が「(非常に)良い」と回答。全国的な稼働率と平均客室単価の上昇に加え、継続的な円安とインバウンド増加が大きく影響している。
投資意欲も高まっており、今後6か月以内に投資増額を予定している事業者は59%に達した。2023年はわずか4分の1、2024年は半数だった状況から大幅な上昇だ。資金調達環境も改善されており、55%が「まったく困難はない」と回答している。
人材確保と育成に注力
雇用拡大計画も力強く、来年にかけての新規採用数は全国平均で7.9人と、総労働力のほぼ3分の1に相当する規模となっている。ハウスキーピングと飲食部門は比較的人材確保が容易な一方、営業・マーケティング、管理部門、マネジメント職の人材確保は難しい状況だ。
研修とスキルアップにも積極的な姿勢を示しており、49%がスタッフ育成への投資拡大を計画している。ホテルおよび旅館では社内および社外の研修プログラムを組み合わせる傾向があり、特に旅館では社内研修を重視する傾向が見られる。ただし高額な費用と高い離職率が、従業員育成へのさらなる投資を阻む主な障壁となっている。
AIの活用に期待
技術面では、AIなどの導入が進んでいる。日本の宿泊事業者は特に不正防止やサイバーセキュリティ領域でAIがもたらす付加価値に注目している。旅館はカスタマーサービスでのAI活用に、ホテルは不正防止におけるAI活用に期待を寄せている傾向が見られた。
ただし技術導入には「ROIが明確でない」「統合が複雑」「高額な費用」などの課題も挙げられている。サイバーセキュリティ対策は共通して実施されているが、スタッフへの定期的な研修は限定的だ。
オフシーズン対策とデジタル活用
季節性対策としては、84%の回答者がデジタル・プラットフォームをオフシーズンの集客確保に効果的と評価している。オンライントラベルエージェント(OTA)の活用、有料検索広告、柔軟な予約ポリシーが主な対策となっている。
また、イベント主催者や観光局との連携を深めたイベント主導型旅行に開拓の余地があるとする見方も多い。
調査は2025年7月7日から9月1日にかけて、Statistaによる電話インタビューで実施され、日本の旅行宿泊業界の経営陣およびマネージャー260人から回答を得た。





