全国屈指の人気餅「赤福」
年末年始は餅の季節。かつて年の瀬が押し詰まった12月28日や30日ごろ、多くの家では餅搗(つ)きが行われた。家族構成や生活形態の変化などで今は希少だが、町内会や幼稚園など年中行事として続いている。
餅は鏡餅や雑煮など正月や祝い事などに欠かせない日本の伝統的な食文化を象徴する一つで、雑煮、お汁粉、やきもち、大福、豆餅、黄な粉餅、安倍川餅などいろいろに食べる。
すぐ硬くなるので、和菓子店では朝作ってその日のうちに食べきる“朝生(あさなま)”として売っている。
餅は臼と杵(きね)でぺったんぺったん搗く音で隣近所に知られるので何軒かに配ったものである。
その点、同じ餅でもおはぎやぼた餅は摺鉢(すりばち)で半搗きだから気付かれず、配る気遣いも不要。それゆえ「隣知らず」「夜船」(いつつくかわからない)、「北窓」(月は映らず=月知らず)など粋な呼び名があった。
多種ある餅の中で、よく知られるのが伊勢神宮内宮門前で創業319年になる赤福本店の「赤福」。白い餅を川底の石、三筋に盛ったこし餡(あん)を五十鈴川に見立てたあんころ餅である。

全国屈指の人気餅「赤福」
湯気が立つ大釜のある茶店で味わうと、ほどよい歯応えの餅と絶妙な甘さのきめ細かな漉(こ)し餡が昔に変わらずおいしい。
名古屋、京都、新大阪の駅構内でも販売。日保ちは3日だが冬季は取り寄せもできる。
おはらい町には他に粒餡入りよもぎ餅の「神代餅」(勢乃國屋)や、粒餡入りの平たい餅をこんがり焼いた「太閤出世餅」(太閤餅)などの茶店が集まっている。
さらに近辺には「赤福」より古い創業451年になる二軒茶屋餅角屋本店のこし餡たっぷりのきな粉餅「二軒茶屋餅」がある。
また餡を包んだ餅を平たくして両面をこんがり焼いた創業251年のへんばや商店の「へんば餅」(日保ち2日)も米粉とこし餡がきめ細かい歴史ある餅。

甘味きめ細か「へんば餅」
菓名は伊勢参りで来た馬を返した場所に茶店が在ったことにちなむ。おはらい町にも支店がある。
伊勢で餅菓子が隆盛なのは腹持ちのよさと餡の甘さが伊勢参りの疲れ取りにピッタリだったのだろう。
(紀行作家)
【メモ】「赤福」=赤福本店(0596・22・2154)。折箱8個入り税込み900円。冬季(~5月)取り寄せ可。「へんば餅」=へんばや商店本店(0596・22・0097)。2個230円~。




