竹内氏
かんきつ類をいただいた。化粧箱を開けると、直径10センチくらいのオレンジのような果実が10個、きちんと整列していた。同梱(とうこん)されたしおりに「愛媛生まれの新カンキツ」と書いてある。その名は「紅まどんな」。甘い香りに誘われ、食べてみることに。しおりに「スマイルカットで召し上がれ」とある。はて、スマイルカットって? 外皮の薄い紅まどんなは、ミカンのように手で皮をむくのが難しい。そこでまず上下を真半分に切り分け、切り口を上に向けて縦半分に、さらに縦半分に切ると、8分の1のくし形になる。ニッコリ笑った時の口のような形になるので、スマイルカットと呼ぶのだ。
仰せの通り、上下真っ二つに切ってみる。すると、中に閉じ込められていた果汁があふれ出し、まるで表面張力! ヤバっ、こぼれるぅ~、と小さくカットするのを断念、4分の1で口に運んでしまった。むっちゃジューシーで、口の中が甘い果汁の大洪水♪ 果肉がトロリととろけそうで、この食感は初めてかも?
…というワケで、調べてみた。その食感から「樹になるゼリー」とも呼ばれている紅まどんな、愛媛県農林水産研究所果樹研究センターで、「南香」と「天草」というかんきつの交配により育成され、2005(平成17)年に登録された新品種。正式品種名は「愛媛果試第28号」で、07年に全農えひめが「紅まどんな」として商標登録した。愛媛県のオリジナル品種であり、栽培は同県内に限られている。見た目や糖度など、JAの厳しい選果基準をクリアしたモノだけがこの名を名乗れるそうだ。そのブランド管理は徹底しており、毎年収穫前に、JAや市場の関係者が集まり、選果基準を確認する「選果目合わせ会」を開催し、その年の基準を決めているという。
糖度はおよそ13度以上ともいわれ、甘みが強く酸味が柔らかく、ゼリーのような食感と相まって、まるで高級スイーツを食べているかのようだと人気が高い。外皮が薄く非常にデリケートなので、栽培が難しい。直接風雨が当たらないよう、施設栽培や袋掛けなどが必須という。選果場でも、桃と同じ選果機が使われるほど。ちなみに、外皮の傷などで惜しくも基準に届かなかった果実は「あいか」の名で、またJAを介さず果樹園が独自に出荷している商品は、「媛まどんな」「瀬戸のまどんな」などといったオリジナルブランド名で販売されている。
オレンジとミカンの交配種、タンゴールの一種だけあって、両方のいいとこどり♪ 種がほとんどなく、内皮が極薄で食べても口に残らない。12月が最盛期なので、年末の贈答用としての需要も高い。同県特産品のいよかんの消費低下と、価格下落に悩まされたため、代わりになる新品種育成を目指し、10年以上もの試行錯誤を経て開発された紅まどんな。今やいよかんの数倍もの高値がつく高級フルーツに。努力のかいがあったというものだ。あまぁ~いタップリ果汁にとろける新食感♪ アナタもきっととりこになるハズ!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




