【私の視点 観光羅針盤 503】富裕層偏重からアッパーミドル重視へ 吉田博詞


私の視点 観光羅針盤

 ここ数年、各地で「富裕層誘致」が観光政策の主軸として語られている。高単価で地域経済への波及効果が大きい点は間違いない。しかし、富裕層を前提にした施策に偏りすぎると、地域の現場力や人材育成が伴わず、持続可能な基盤づくりにつながらないという課題が顕在化してきた。富裕層は世界人口のごく一部で、地域側が受け入れるとしても年数回程度の限られた機会になってしまう。

 一方で、訪日市場で最も重要なのはアッパーミドル層である。近年は欧米豪の顧客の中心がこのゾーンにあたり、アジア圏も増えている。特に米国・オーストラリアのアッパーミドル層は旅行消費額が高く、文化・自然体験への関心も強い。世界全体で見れば、年収5万~10万ドル(約750万~1500万円)前後のこの層は人口規模が大きく、旅行への支出意欲が高い。訪日消費額は1人20万~50万円程度、宿泊は1泊3万~6万円の価格帯が中心で、旅行市場の”安定的な主役”といえる。

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