外国人労働者の雇用に関して、ここまで「特定技能1号・2号」と「育成就労」についてみてきた。続いて「技人国」の制度について整理しておきたい。
(23)技人国(技術・人文知識・国際業務)
大学などで学んだ専門知識や、関連分野での10年以上の実務経験をもとに、専門的な業務に従事する外国人のための資格である。宿泊業で言えば、企画、予約管理、海外販促、通訳、SNS発信といった知識系業務での活用が想定される。
5年、3年、1年、3カ月の期間区分があり、初回申請時は通常1年または3年となるが、更新を重ねることで5年の期間が許可されるケースが多くなる。在留期間に上限はなく、条件を満たし続ける限り、永く更新を続けることが可能だ。さらに、日本で10年間の継続在留など、一定の条件を満たせば永住権の取得申請も可能である。
家族(配偶者と未成年の子)には「家族滞在」という在留資格が付与され、技人国就労の本人に帯同(一緒に日本で生活)することができる。またその配偶者については、次に述べる「資格外活動」として、週28時間以内のアルバイトも認められている。
ただし技人国は、専門的な知識などを生かした「知的貢献」を旨としており、そもそも労働力不足を補うことが目的ではない。そのため、就労可能な業務範囲は明確に限定されていて、清掃や配膳といった単純作業や、専門知識と無関係な仕事は認められない。「特定技能」では、「関連業務に付随的に従事すること」も認められているが、これがならないのである。マルチタスク化が求められる昨今、そうした限定的な仕事だけやっていればよいという就労イメージは描きにくく、現実問題として一般の中小旅館で使うことは難しいと考えられる。
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以上が、旅館業で考えられる代表的な在留資格だが、これらとは別の就労形態について付け加えておく。
(24)資格外活動(留学・家族滞在)
留学生など、本来は就労を目的としない在留資格でも、入管(地方出入国在留管理局)から許可を受けることで、一定範囲のアルバイトが認められる。これを「資格外活動」という。留学生なら週28時間以内、夏休みなどの長期休業中は1日8時間、週40時間の就労が可能であり、家族滞在の配偶者についても週28時間までの就労が認められる。これらの人が複数の職場で働く場合は、就労時間の合算管理が必要になる。
あまり本格的な戦力とはなりにくいかもしれないが、週末や繁忙期の補助要員、あるいは語学力の生かされる場での活用はありえよう。
(25)実務上の留意点
「特定技能1号」と「育成就労」は一定年数で終了するため、更新管理と次のステップ設計を同時に進めることが肝要である。移行のための評価試験や実務要件の確認を怠ると、定着戦略が崩れることにもなりかねない。だが一方、受け入れ機関としての支援計画や日本語教育の機会づくりをしっかり行っておくことは、離職防止にもつながる。
「技人国」では、専門性と無関係な業務を混在させると在留違反になるので、職務記述やシフト管理など、監査に耐えられる記録を残しておくことが重要だ。
(リョケン代表取締役社長)




