【地域創生と観光ビジネス90】2025年を振り返って 万博・女性首相・クマそして 千葉千枝子


 2025年も間もなく暮れようとしている。コロナ禍を脱して、不死鳥のごとく回復した日本の観光産業は、わが国のリーディング産業へと、さらに一歩、近づいた感がする1年だった。

 今年一番のトピックは、何といっても「EXPO2025大阪・関西万博」の成功だろう。筆者もミャクミャクのぬいぐるみをゲットして、近大マグロに舌鼓を打った。「KANSAI MaaS」がうまく機能していることにも感心した。

 日本初の女性首相が誕生した歴史的な年である。火のないところに煙は立たない。台湾有事のXデーを目前に、集団的自衛権行使の前提となる「存立危機事態」を口にしたことが波紋を呼び、中国は日本への渡航自粛を呼びかけた。それが日本国民は、意外とクールに受け留めた。高い支持率は、毅然とした首相への拍手喝さいでもある。終戦から80年。そして東日本大震災から間もなく15年。福島含む5県産食品の輸入規制を撤廃した台湾に感謝したい。

 今年、久しぶりに訪ねた香港が、とにかく気になる。

 中国との関係悪化の直後に入った高層住宅火災のニュース映像には、心が痛んだ。7月日本「大災害説」が、遠い過去のことのようにおもえる。EGLツアーズの袁文英さんも逝ってしまった。

 そうしたなか救いだったのが、香港政府観光局の山本恵美さんと久しぶりの再会が果たせたことだった。「香港ディズニーランド・リゾート」の話を聞いて、(次回はディズニーか)と考えていた。南紀白浜「アドベンチャーワールド」のパンダも去って、寂しい気持ちだ。日本経済の先行きをおもえば、中国との関係回復は今後、大きな課題となるだろう。

 火災といえば、2月の大船渡の山林火災、11月の大分佐賀関・大規模火災は、いずれも筆舌に尽くしがたいものがあった。心からお見舞い申し上げます。どこから、何から出火するのか分からない。航空機利用の出張には、モバイルバッテリーを持ち歩かなくなった。

 さて、北海道や秋田、岩手をはじめ各地では、過去にないほどクマが出没するようになり、痛ましい出来事が相次いだ。動物との共生について考えさせられる。

 今年は筆者も野生のクマに2度も会ったし、野生のシカはそれ以上に出会った。クマはいずれも車窓からだったが、子グマを見たときには動揺してハンドルを握る手が震えた。それが今や、大型スーパーや公衆トイレ、保育園に役場、銀行本店の地下駐車場、露天風呂、スナックの外など、場所を問わず現れる。白川郷では外国人旅行者も被害に遭った。観光産業には大きな痛手である。

 今年6月、群馬・甘楽町の茂原荘一町長(当時)が亡くなられた。観光庁の採択事業をはじめ、公私にわたり世話になった地域活動の恩人である。柔和で実直、優しいお人柄で、「うちの畑で採ってきたよ」と段ボール箱いっぱいに新鮮野菜をいただいたこともあった。イタリア・チェルタルド市と姉妹提携を結んでいることから、上質なワインやオリーブオイルが豊富で、それが自慢だった。町長を5期、群馬県町村会長も務められた。天国では、ゆっくりしてほしい(合掌)。

 2025年を振り返って。

 (淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)

 
 
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