世界遺産・醍醐寺三宝院(京都市伏見区)。豊臣秀吉が晩年、「醍醐の花見」を催した地として知られるが、その庭園を舞台に11月29日、当時の「舟遊び」を再現し、能と笙(しょう)による夜間特別上演が催された。紅葉に染まる庭園は厳かな雰囲気に包まれ、招待者はため息とともに見入っていた。
主催は醍醐寺。カルチュラル・エデュツーリズム・カウンシル(CEC、地野裕子代表)が企画し、京都府・府観光連盟の「『京都朝・夜観光』推進事業補助金」を活用して実施された。
このイベントは「醍醐寺が守り続けてきた国宝や重要文化財を次代に継承するために立ち上げたプロジェクトの第一歩」(地野氏)で、(1)夜間観光による観光時間の分散化(2)地域の新たなにぎわい創出(3)周遊観光の促進―などが目的。
外国人富裕層や文化体験に関心の高い日本人、富裕層向け旅行会社担当、SNS発信意欲の高い若年層や外国人旅行者などを対象に11月29、30日、12月6、7日に開催。拝観料は千円。
京都市内から来たという中年女性グループの一人は、「醍醐寺は来たことはあるが、紅葉の時期、夜間は初めて。ライトアップされた庭園はとても雰囲気が良く、舟に乗って演者が現れる演出は感動した」と話した。
醍醐寺の大原弘敬・執行長は「初めてのイベントであり、醍醐寺の魅力を多くの方に知っていただきたいという思いだ。外国人も足を運んでくれるが、境内は広く、オーバーツーリズムではない(笑い)。アンケート調査などを実施してこのイベントを検証し、結果が良ければ引き続き開催を考えたい」と意欲を示した。
醍醐寺は平安時代の貞観16(874)年に理源大師・聖宝によって開かれた真言宗醍醐派の総本山。国宝・五重塔は府内で最も古い木造建築で、金堂は秀吉によって移築された歴史あるお堂。
特別史跡・名勝でもある三宝院。庭園は秀吉が醍醐の花見に際して自ら指示して整備したもので、庭の中心には天下を治める者が持つ石として室町時代から引き継がれ、織田信長から秀吉の手に渡った名石・瀬戸石が置かれている。
庭園ではかつて舟遊びが行われ、今回それを現代に再現。能楽師の河村晴久氏(観世流)と鳳笙奏者の井原紀子氏がライトアップされた池に浮かぶ舟で登場し、演じた。

当時の「舟遊び」を再現した夜間特別上演




