免税制度廃止でGDP5,500億円減少 業界団体が試算発表


パネルディスカッションの様⼦

訪日観光の価値と課題を議論 140名超が参加

 一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会は12月1日、「成長産業としての訪日観光に必要な視点と課題」をテーマとしたカンファレンスを都内で開催した。業界関係者や政府関係者、メディア等140名超が参加し、訪日観光の持続的成長に向けた議論が繰り広げられた。

 カンファレンスでは、早稲田大学大学院経営管理研究科研究科長・教授の池上重輔氏による基調講演に続き、免税制度廃止による財政への影響分析が発表された。EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社のデータサイエンティスト藤井洋樹氏による分析では、免税ショッピングを廃止した場合、2023年において日本のGDPが約5,500億円減少し、税収全体も約240億円減少するとの試算が示された。2024年については参考計数として、GDPが約8,500億円減少、税収が約500億円減少するとの見通しも報告された。

 池上氏は基調講演で、「国際観光は巨大な市場規模を有し、その中において日本は世界的にも高い評価を受けている」と強調。2024年のWEFトラベル&ツーリズムディベロップメントインデックスで日本が世界3位であることを挙げ、「価格競争力だけでなく、文化資産など日本独自の価値を高め、価値に見合った価格設定が重要」と述べた。

 パネルディスカッションでは、池上氏に加え、日本観光振興協会理事長の最明仁氏、日本百貨店協会会長の好本達也氏が登壇。ジャパンショッピングツーリズム協会代表理事の新津研一氏がファシリテーターを務め、「成長産業としての訪日観光の価値」「訪日観光の課題」「観光立国戦略への期待」の3つのテーマについて意見交換が行われた。

 最明氏は「訪日観光客数が1,000万人を超えたことを境に、食品や農産物の輸出が大きく伸びている。緑茶が7倍、味噌が2倍、日本酒が4倍、お米が10倍に増加した」と観光による波及効果を指摘した。好本氏は「外国人旅行者のショッピングは訪日観光の目的第2位である。外国人旅行者は価格に敏感であり、免税制度は必要だと考える」と述べ、免税制度の維持と市場拡大の重要性を訴えた。

 また、オーバーツーリズムや顧客ニーズの変化、地域経営のあり方などの課題についても議論された。観光産業がもたらす効果は直近において大都市圏よりも地方で高い成長率を示していることが特筆され、地方における地域活性化・持続的成長の起爆剤となることが共有された。

 参加者からは、来年11月に予定されている免税制度のリファンド型への移行や、官民・異業種連携によるショッピングツーリズムの推進が、グローバル競争の中で重要であるとの認識が示された。

 ジャパンショッピングツーリズム協会は今後も、ショッピングを中心とした新しい観光価値の創造を通じて、日本の成長および地域活性化に貢献していくとしている。

 カンファレンスは経済産業省、観光庁、日本観光振興協会の後援、日本小売業協会、日本百貨店協会、全国免税店協会の協力のもと開催された。

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