今、日本各地で、富裕層向けを標榜(ひょうぼう)した“高付加価値商品”の造成が加速している。しかし現場を見て回ると、そこで提供されているのは「高付加価値」ではなく、単に「高単価」であることを正当化しただけの企画も少なくない。見栄えのする料理に高級食材を添え、移動はハイヤー、宿泊はラグジュアリータイプ。こうした外形要素を足し算すれば高価格の商品はつくれる。だが、肝心のストーリーも必然性もない。地域ならではの“触れる理由”が伴っていないため、顧客の心に深い残像も残らない。
そもそも富裕層市場は「高いものを買いたい層」ではない。むしろ、本物に触れたい、手の届きそうで届かない世界を体験したい、時間を使う価値のある“物語”に投資したい。そんな動機で行動する人々である。ところが現実には、地域側が“富裕層=単価を吊り上げる対象”と誤解しているケースが目立つ。結果として、単に高額化したプランが乱立し、ターゲット想定・販売先の設定も甘いまま、売れない状況が続くことが残念でならない。
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