【体験型観光が日本を変える421】旅行マインド喚起の政策を 藤澤安良


 高市政権が発足して1カ月がたとうとしている。既定路線であったガソリンの暫定税率廃止は決まったが、他の物価高対策は時間がかかりそうである。

 連日連夜ニュースになっているのは、クマによる農作物被害と人的被害の続出で、その対策に追われている。

 銃による駆除を猟友会や警察官が行い、防災などを自衛隊の協力を得て行うなど大きな問題となっている。大自然の中へと踏み入る紅葉狩りの季節に観光にも水を差すことになる。

 台湾有事の件で首相の答弁を巡って中国政府の厳しい反応があり、中国政府は14日夜、中国国民に対し、当面の間日本への渡航を避けるよう厳重な注意喚起を行った。すでに日本にいる中国国民に対しては、「現地の治安情勢に細心の注意を払い、自己防衛を強化すること」を求めた。

 しかし、日本人の国民感情がにわかに変わるものでもなく、また、日本の受け入れ態勢や治安の変化が起こっているわけではない。航空機のキャンセル料は無料の発表があったが、欠航や運休の発表は今のところない。中国人にとって一番行きたい国日本への観光客の動向に注目したい。

 日本人の海外渡航マインドは相変わらず低い。中高年の個人旅行は旅行会社のツアー企画やレンタカー利用などの動きはあるものの、日本人の国内向けの旅行消費も芳しくない。

 選挙の政策にもなった手取り額のアップ、所得減税、消費税減税など注目が集まった政策の実現や、先行きの見通しが開けるなどの気分の高揚が旅行の動機になる。

 景気や旅行マインドに左右されないマーケットは修学旅行ということになる。それらの誘客戦略のために東奔西走している。

 対ドルで155円に迫っている中では海外修学旅行も費用がかさみコロナ以前には戻りそうもない。バス代をはじめ交通費も高くなり、宿泊料金もインバウンドと食材高騰に引っ張られている。

 遠くへ行きたいからと、近くの観光地巡りではなく、普段できない農林水産業や伝統工芸などの体験、アウトドアスポーツや自然体験などが感動を呼び、教育効果が高いと、これら体験交流型の旅行が求められている。ニーズが大きく変わってきている。

 昨今のテレビ番組傾向でもあるが、地方の農山漁村の食料生産現場に出かけ、生産者の直接の指導により農産物や魚介類をその場で料理し食べるという場面がとても多い。おいしいのは当然である。出来合い総菜や輸入食材が横行する中にあって、産地でしか食べられない新鮮食材による地域の味覚が求められている。旅のぜいたくとは地産地消である。

 子供だから生徒だからと、ハンバーグやバーベキュー、カレーなど、子供が好物だと思うものに寄せていく安易な食は食育教育にならない。地域の人や生産者から料理をする過程を学び、自らが上手でなくても作れるようになることを目標としたい。さもなければ、日本の伝統的な田舎料理や家庭料理が絶滅危惧種となる。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されている。旅も教育も食を未来につなげたい。

 
 
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