東京は猛暑日(35度)で、熱中症警戒アラートが発せられている最中、気象予報では札幌は28度の予報を見て、道東の中標津空港に飛び南知床標津町にうかがった。
同じ北海道とはいえ、札幌とは大違いで18度と半袖では肌寒く、以前にも触れたが東京の天気予報では北海道は札幌しか出なくて、それでまとめるのは無理がある。これだけ違うと北海道は道北・道南・道東と3カ所の情報は必要である。ネットで詳しく調べなかった自分が不用意だった。
しかし、6~9月は関東以南は沖縄まで猛暑日が並んでいる中で、長袖シャツで爽やかで心地良い季節である。
日本遺産「『鮭(さけ)の聖地』の物語~根室海峡1万年の道程~」にも選出された象徴的な拠点施設ポー川史跡自然公園には、1万年前の縄文時代早期から約800年前のアイヌ文化期までの竪穴式住居群などの遺跡群があり、4400を超える住居跡が発見されており、日本最大級である。その遺跡から鮭の骨が発掘され、1万年前から鮭を食べていた証拠となった。鮭の聖地といわれるゆえんである。
先人は丸木をくり抜いた丸木舟で鮭を捕ったとされているポー川で、似た形状のカナディアンカヌーに乗って鮭は取らず、清流にしか繁茂しない梅花藻の白くて小さくかれんな花を観察する企画である。歴史文化と今日の自然とを融合させた浪漫あふれるプログラムとなった。
子供の参加もあり、25人で10艇で繰り出した。東京では日差しをどう避けるかなのに、快晴で太陽の日差しがほんのり暖かく、新緑がまぶしく、岸辺には花が咲き、水辺にエゾシカの足跡もあり、数種類の野鳥のさえずりまで聞こえてきた。
熱中症も線状降水帯もゲリラ雷雨も気にせず、快適な旅(仕事)となった。忘れてはならないのが地元で捕れる、北海シマエビ、ホタテ、ウニ、サケ類、ブリ、イクラ、タラコ、カニ、タコと枚挙にいとまがない。豊富な魚介類が食卓をにぎわせてくれる。
当地でいただくゆえに鮮度は言うまでもなく刺し身やすしは格別である。滞在中列挙したもの全てをいただいた。地産地消の旬の食事こそが旅の醍醐味(だいごみ)である。
地球温暖化は海水温の上昇もあり冷水のサケは不漁になり、南方で捕れていたブリが豊漁となるなど、漁業にも大きな影響を与えている。気候条件と当地ならではの体験プログラムと食がそろえば、素晴らしい旅の条件がそろう。
猛暑を逃れるため、2拠点居住も話題になる時代ではあるが、そこまでいかなくとも避暑の滞在地としては最高の立地である。雪原と流氷の冬の白い大地も魅力である。
観光とは国の光を観る意味だが、いま光が当たっていなくとも、磨き上げてスポットライトを当てれば大きな光を放つコンテンツが地域には潜んでいる。観光、つまり国の光を観るには、地域の光を探すことから始め、磨き上げるプロデューサー、スポットライトを当てるプロモーション、プログラムを進行するインストラクターが必要である。そしてその人材育成こそが観光振興に通じる道である。




