【日本政府観光局インバウンド最新リポート 126】独のアウトドア旅行者層 地方誘客と訪日時期の分散へ JNTOフランクフルト事務所 多田憂哉次長


メディアチームの東北海道地域の招請旅行の様子(Michael Neumann氏撮影)

 「僕らはみんなWanderlustを持っている」。ドイツ人の友人に「なぜドイツ人は旅行が好きなのか」と直球の質問をぶつけた時の返答だ。調べてみたところ、Wander(旅・歩く)+Lust(欲)の単語をつなげ、「旅行を渇望する熱い思いや欲求」を意味する言葉であった。現在では英語圏でも一般的な言葉となっているようだが、もともとはドイツ語由来である。一つの単語に昇華するほど、旅行というものに対して強い情熱を持っていることに驚きつつも、ドイツ人の旅行好きを裏付ける言葉に出会えたようでうれしかった。

 2024年の訪日ドイツ人数は32万人を超え、2019年比37.8%増を記録した。25年に入ってからも着実に増加傾向にあり、毎月、同月比過去最多を記録し続け、1~9月時点で累計31万人を超えた。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、24年ドイツ人延べ宿泊者数は東京や京都で多いのは揺るがないが、19年からの伸び率が高いのは石川県や和歌山県などの地方部だ。

 そこで当事務所では、伸びしろの高い地方部の認知度を上げることによる「地方誘客と訪日時期の分散」に取り組んでいる。ドイツ人の訪日時期のピークが春と秋であるのに対して、6~8月の夏や12~2月の冬は低調にあることを踏まえ、これらの季節でも楽しめる地方コンテンツの情報発信を行っている。

 例えば、昨年7月にドイツのアウトドアブランド「Globetrotter」のメディアチームを招請し、夏の東北海道で釧路方面での雌阿寒岳ハイキングや阿寒湖のカヌー体験、知床でのハイキングなどのアクティビティのほか、動物との遭遇やアイヌ文化などのエッセンスを交えて、自然・アウトドア・異文化体験に焦点を当てた情報発信を行った。

 また同社とは他にも、野沢温泉や白馬、ニセコでのスキー体験など、冬のコンテンツを軸としたPR記事を制作し同社Webサイトに掲載した。

 さらに今年度に入り、ロングホールを中心に扱う旅行会社「Explorer Fernreisen」と連携し、「冬の日本旅行」と題する共同広告で、日本の温泉地やスノーモンキー、雪に覆われた風情ある日本庭園など、冬の日本で楽しめるコンテンツを発信した。

 これらの施策も一助となったのか、25年8月はドイツからの訪日者数が前年比48%増と高水準となるなど、夏の訪日が確実に伸びてきている。

 アウトドア・自然体験は季節性との親和性が高く、かつドイツ人に響くパッションであると確信する。ドイツで暮らしていると、夏には家族や親しい友人を連れ立ってハイキングコースを歩き、冬にはアルプスの山へスキーに出かけていくドイツ人をよく見かける。Wanderlustを持つドイツ人にハイキングやトレッキングを含む自然・アウトドア体験といった側面でアプローチすることは有効であることを実感している。

 今後もドイツ人旅行者向けに、「地方誘客と訪日時期の分散」の両方を目指し、アウトドアや自然を軸とした訴求を行うことで、ドイツ人のWanderlustに響き、訴えかけられるようなプロモーションを行っていく。   


メディアチームの東北海道地域の招請旅行の様子
(Michael Neumann氏撮影)

 
 
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