東武トップ&旅ホ連・運観連 相互利益の発展へ 若手経営者が意見交換(東日本地区)


懇話会の様子(会員施設の若手経営者)

脱FAXや送客など、課題を共有

 東武トップツアーズ協定旅館ホテル連盟(旅ホ連)と同運輸観光施設連盟(運観連)は10月27日、共同事業「若手経営者と会社幹部の懇話会」の東日本地区会合を、湯の杜ホテル志戸平(岩手県・志戸平温泉)で開いた。会員施設から各会長と若手経営者7人、会社から百木田康二社長ら4人が出席。双方が相互利益を高めていく上での課題や、今後の連携の在り方について意見を交わした。

 まず議題に挙がったのは、業界に根強く残る「紙(FAX)文化」からの脱却だ。貸し切り観光バス事業を運営する佐藤哲也氏(埼玉県・エスケー交通)は、「コロナ禍を機に、見積書のやり取りなどをFAXから全てクラウド管理に切り替えたところ、自動的にテレワークにも対応できるようになった」と、デジタル化による業務改善効果を紹介。また、旅行会社とのコミュニケーションツールとしてLINE WORKSの導入拡大を提案し、リアルタイムでの情報共有の重要性を強調した。「定休日にFAXで重要な連絡が届いても気が付かないことが多い。そういう時こそチャットが役に立つ」。

 渡部順司氏(北海道・サイロ展望台)は、「買い手である旅行会社からぜひ、オンライン化を進めるプレッシャーをかけてほしい」と述べ、意識改革を訴えた。

   ◇    ◇

 集客のターゲット層についても議論を交わした。山形県米沢市で土産物店「上杉城史苑」を運営する遠藤勲氏は、県内の大型観光立ち寄り施設9カ所でつくる「山形おとなりさん連絡会」の取り組みを紹介。県内を訪れたマイカー客や団体客に県を周遊してもらおうと、各施設や県の観光物産協会などと連携しドライブスタンプラリーの実施や、独自商品の開発を行っている。「旅行者は1県にとどまらないケースが多い一方、行政の支援は県単位で固定されがちだ。旅行会社に複数の県をまたいだ企画を組んでもらえれば、各県からの支援も得られ、送客のお願いもしやすくなる」と述べ、広域周遊観光の重要性を訴えた。

 渡部氏は、「団体客依存からの脱却」を強調。「個人間で話題になった施設であれば、旅行会社の営業担当者も『話題になっているから商品に組み込んでみよう』と考えるのが本来あるべき送客の在り方ではないか」とコメント。話題づくりの一例として、自社で開発した飲むヨーグルトのイベントを開き、販売本数でギネス世界記録を樹立した実績を紹介した。

 静岡県伊東温泉で「ホテル暖香園」を営む北岡ゆうこ氏は、宴会場の運営を続けつつも、個人客へのシフトが進む業界の流れに言及し、経営者としての葛藤を率直に語った。その上で、「人と人とのつながりが一番大事。個人のお客さまに当館を知ってもらい、次は家族で、次は3世代で、次は社員旅行で―というように『次』につながることを意識して接遇しないと、その日限りの関係で終わってしまう」と述べ、人として向き合う姿勢の大切さを述べた。

 名湯一門 高見屋グループの岡崎一葉氏(三木屋参蒼来=山形県かみのやま温泉)は、個人客の集客についてOTA(オンライン・トラベル・エージェント)に対抗するのではなく、インセンティブ(報奨)旅行に注力すべきと提案。「団体ではなく、2人以上で各自ホテルや観光施設を選択して自由に過ごしてもらうインセンティブ旅行など、柔軟なスタイルを積極的に取り入れてほしい」。

 湯の杜ホテル志戸平の久保田剛平氏は、かつて団体客が中心だった運営スタイルを、コロナ禍を契機に個人客重視へと大きく転換した経緯を説明。「現在、リアルエージェント経由の集客は1割、OTA経由が2~3割程度。直販率を高めたいというのが本音だが、お客さまに宿を知ってもらうきっかけになるのは旅行会社やOTAであることが多い。互いに情報発信を強化し、WinWinの関係で集客できるような体制が理想」とコメントした。

   ◇    ◇

 2次交通の課題についても触れた。大西希氏(北海道・鶴雅ホールディングス)は、「大阪・関西万博で来場者の輸送業務を東武トップツアーズなどリアルエージェントが担っていた。そういった知見を、交通事業者を巻き込みながら地域のMaaSなどに活用できないか」と提案した。

 東武トップツアーズの強みとして、百木田社長は「コーディネート力」と「ホスピタリティ」の2点を挙げた。「モノを持たない会社だからこそ、会員施設と協業し、価値を共創できる」と述べた上で、「現在、全国23の自治体と災害時の連携協定を締結しており、日頃の送客を通じて信頼を築き、有事には優先的な受け入れにつなげる、実効性ある仕組みを構築している」と、相互利益の関係づくりに注力する姿勢を示した。

 出席した会員施設は次の通り(敬称略、順不同)。

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