食事を提供する旅館ホテルとして、最も気をつけたいのが食中毒です。
食中毒は、それを起こす微生物が食品に付着、または増殖した飲食物が人の体内に入ることで引き起こされます。また、有害物質(自然毒を含む化学物質)を含んだ飲食物を摂取したりすることによるケースもあります。
飲食物によって起こる食中毒の場合、その微生物の量が問題になります。大人か子供か、あるいは個人差もありますが、一般に原因菌が食中毒を引き起こす菌数を超えると、発生します。
食中毒には細菌性のものとウイルス性のものがあります。また、細菌性食中毒は発生のメカニズムによって感染型と毒素型に分けられます。
●細菌性食中毒の代表的なもの
〇サルモネラ菌食中毒(感染型)
サルモネラ菌は熱に弱く、低温には強いという性質があります。食品を長期にわたって冷凍保存しておくと、菌がそれだけ長生きすることになります。菌の増殖を防ぐには調理後すみやかに食べてしまうことです。
発生多発時期:夏期
潜伏期間:8~48時間
主な症状:嘔吐、腹痛、発熱(38度前後)
予防策:卵はすぐに冷蔵保管。割ったらすぐに調理し、割り置きは絶対にしない。肉類は低温で扱う。調理の加熱は十分に行う
〇腸炎ビブリオ菌食中毒(感染型)
3%ほどの濃度の食塩水の中で最もよく生育します。増殖速度は他の菌に比べて早いのが特徴です。60度で15分加熱、100度の加熱なら数分でほぼ死滅します。生鮮魚介類が原因のケースと、魚介類の細菌がまな板やふきん、包丁などを介して他の食材に移って原因となるケースがあります。
発生多発時期:夏期
潜伏期間:8~15時間
主な症状:強烈な腹痛、下痢、脱水症状
予防策:魚介類は調理前に水道水でよく洗う。魚介類を使用した調理器具類はよく洗浄、消毒をし、まな板やふきんは魚介類専用の物を使用する。生食用の魚介類は10度以下で保存。加熱は60度で4~5分を最低とする
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。
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