ディーン・ダニエルズ氏(=左)とアンドリュー・ラングドン氏
110か国以上で5,600軒のホテルを展開する世界最大級のホスピタリティグループであるフランスの「アコー」。アコー日本代表取締役のディーン・ダニエルズ氏とアコー チーフ・デベロップメント・オフィサー (アジア)のアンドリュー・ラングドン氏が11月18日、日本における今後の成長戦略などについてプルマン東京田町で語った。
2028年にラグジュアリーブランド「ラッフルズ東京」開業
アコーは日本市場において現在46軒のホテル、約1万1000室を展開している。今後は2026年に広島で「東急ステイメルキュール広島」、2027年には「プルマン東京銀座」、そして2028年には同社のラグジュアリーブランドである「ラッフルズ東京」の開業を予定している。ダニエルズ氏は「2028年に東京でラッフルズを開催することが最も重要で最も興奮的なこと」と語った。
日本市場はアジアの中で「最も重要な戦略的市場」との位置づけだ。ラングドン氏によれば、アコーはアジア地域で約500ホテル、11万室を運営しており、19のブランドを展開。2030年までに約230のホテル、6万軒のホテルを新たにオープンする計画という。
3つの開発トレンド
ダニエルズ氏は日本におけるホテル開発の主要な3つのトレンドについて説明した。
第一に、地方都市への展開拡大。「外国人が日本に来て東京、大阪、京都に行くと終わりに帰っていたが、今は変化している。今は他の場所に行き日本を探し、日本の真実を見たいという需要がある」と語った。インバウンド観光客は真の日本文化や食事、人々との触れ合いを求め、地方都市やウィンタースポーツができる地域への関心が高まっているという。
第二に、フランチャイズモデルの拡大。現在の46件のホテルのうち、43件はマネジメント契約(MC)、3件がフランチャイズ契約(FC)だが、今後はフランチャイズを増やしていく方針だ。ダニエルズ氏は「フランチャイズはホテルのオーナーに自分の財産を管理することができ、同時にインターナショナルブランドの利益、ロイヤリティ、ブッキングパワーを得ることができる」と説明した。
第三に、既存ホテルのブランド変更(コンバージョン)の活用。「特に地域の都市において、建築費や土地費の高騰が要因となり、新しいホテルを建てるのは難しい」としてリブランディングの重要性を強調した。46軒中9軒(フェアモント東京、プルマン東京田町、ノボテル奈良、メルキュール東京羽田、メルキュール京都ステーション、メルキュール飛騨高山、東急ステイ メルキュール 大阪なんば、イビススタイルズ東京ベイ、イビススタイルズ名古屋)が新規建設で、残りの37件がコンバージョンあるいはリブランドによるものだという。
インバウンド復活とAI活用
インバウンド需要については、「今年末までに4000万人の海外インバウンドが来日する見込みで、去年と比較して8.9%増、2019年比では26%増になる」とダニエルズ氏。特に韓国、中国、台湾からの訪日が多いという。また、国内需要も強く、年間約14兆円の国内旅行消費があるとした。
宿泊者の比率については「全ホテルでいうと、インバウンドが55%、国内が45%。もともと大和リゾート(ダイワリゾート)の23軒を取得する前は、インバウンドが65%、国内が35%だったが、23軒の取得により国内比率が上がった」と説明した。地方のホテルでは国内客が8割を占めるという。
販売チャネルについては「約3割が直販、7割がOTA(オンライン旅行代理店)」だが、ホテルによって異なり、東京の物件では直販比率が6割を超えるケースもあるという。また顧客層も地域によって差があり「東京では欧州系が多く、地方ではアジア系が中心」と説明した。
人材確保の課題に対しては、AIの活用を進めている。ラングドン氏は「AIはゲスト体験の向上やゲストの期待に応えるために活用している。人々はインタラクションを必要としており、AIがそれを取り除くことはできない」と述べ、主に顧客の予約行動分析や滞在後のフォローアップ、コールセンター業務の効率化に活用しているという。
ダニエルズ氏は「日本で最も大きな問題は働き方改革だ。AIエージェントやAIの助けにより効率的な運営を実現できる」と語った。今後はコールセンターやルームサービスの電話対応などにAIエージェントの導入を計画している。
ロイヤリティプログラムを強化
アコーのロイヤリティプログラム「ALL」は世界で1億人以上の会員を擁する。日本においては、ダイワリゾートの23軒のホテルを取得したことで国内の会員数が大幅に増加し、年間3万人だった新規会員獲得が現在は年間15万〜20万人に増加しているという。
また、楽天やJALとのパートナーシップによる2wayポイントコンバージョンを実施しており、今後もさまざまなパートナーシップを拡大していく方針だ。
ダニエルズ氏はブランド戦略について「マーケットに対してフィットするブランドを提案していく」とし、「日本で最も認知度の高いブランドはメルキュール。フェアモントも認知度が高く、ラッフルズが開業すれば非常に高い認知度を持つホテルになる」と述べた。今後はラグジュアリー・ライフスタイルブランドの展開も視野に入れるという。

ディーン・ダニエルズ氏(=左)とアンドリュー・ラングドン氏
【kankokeizai.com 編集長 江口英一】




