二拠点居住への関心、約3割 若年層ほど高い傾向 ツーリズム政策として一貫した取り組みが必要 EY調査


 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)は11月19日、移住・二拠点居住促進に関する調査レポートを発表した。全国1万人へのアンケートによる分析で、二拠点居住への関心は約3割に達し、特に18~29歳の若年層で高い関心を示すことが明らかとなった。また、観光体験が定住意向につながるケースが多く、住民票移転の可能性は5割弱に上ることもわかった。地域活性化へ向けた新たな視点を提供する内容だ。

観光経験が二拠点居住・移住に直結

 調査によると、二拠点居住への関心を持つ層は全体の30.8%。そのうち8.7%は既に実施または経験があり、3%が「今後実施予定」、22.8%が「条件が許せば実施したい」と回答した。

 注目すべきは二拠点居住先の選定理由だ。最も多かったのは「旅行先でとてもよかった場所」で42.5%を占めた。次いで「これまで何度も訪問している場所」(19.0%)、「行ったことがない場所も対象」(18.8%)と続く。

 移住先の選定理由も同様の傾向を示し、「旅行先でとてもよかった場所」が42.1%でトップとなった。これらの結果から、観光体験が地域への愛着形成に寄与し、定住意向へとつながる傾向が確認された。

 

若年層ほど関心高く、滞在時間も長い傾向

 調査では年代別の特徴も明らかになった。二拠点居住に関心を持つ割合は18~29歳が最も高く、「既に実施」「過去に実施」を含めると40%超に達する。

 さらに、二拠点居住先での滞在時間も若年層ほど長い傾向にあり、18~29歳では「50~75%未満」「75~100%未満」の合計が約30%となった。

 二拠点居住に当たり最も重視する点は「自分がリラックスできる環境」(35.2%)だが、年代によって優先事項に差が見られる。若年層ほど「現在居住地との距離(90分圏内)」を重視する一方、高齢層は「リラックスできる環境」をより重視する傾向が強い。

 

住民票移転の可能性は5割弱

 二拠点居住の経済効果に関わる重要な指標として、住民票移転の意向も調査された。二拠点居住関心層のうち、「すでに移した/移す予定」が6.3%、「検討中」が39.0%で、合わせて5割弱が住民票移転の可能性を示している。

 特に18~29歳では「すでに移した/移す予定」が12.0%と、他の年代よりも高い割合を示した。これは地域の魅力や利便性が比較優位に働けば、主たる居住地の変更も視野に入ることを示唆している。

 

ツーリズム政策として一貫した取り組みが必要

 EYSC ストラテジック インパクト パートナーの平林知高氏は本調査結果について、「人口減少が続く地方においては、減少速度を緩め、経済を維持していくために、移住や二拠点居住の促進も進められています。しかしながらこうした施策は、自治体等の各部署がバラバラに進められていることが多くなっているのが現状です」と指摘。

 「今回の1万人へのアンケート調査を通じて、移住や二拠点居住も交流人口、関係人口の文脈、つまりツーリズムの文脈で一気通貫に考えていかない限り政策の効果は限定的ということが明らかになりました。入口からその出口まで、いかにツーリズムの文脈で考えるかが、成功のカギといえます」とコメントしている。

 

リモートワーク環境整備が交流人口拡大のカギ

 働き方の柔軟性も地域との関わりを深める重要な要素だ。調査では、旅先でリモートワークができる人は全体の1割程度にとどまり、特に40~59歳の管理職層ではその割合が低い結果となった。

 旅先でリモートワークをするために必要な条件としては、「会社の理解」が52.9%で最多だが、上位3つまでの回答では「Wi-Fi環境」「コワーキングスペースのような場所」の需要も高いことが明らかになった。

 また、世界には約3,500万人のデジタルノマド(場所に縛られず働く国際的なリモートワーカー)が存在し、年間支出額は約118兆円に上るという。この層の誘致に向けては、単なる施設整備だけでなく、地域資源や人とのつながりを重視したコミュニティ形成が重要だと報告書は指摘している。

 調査は今年9月に全国47都道府県の18~69歳、約1万人を対象に実施されたもので、レポート全文はEYのウェブサイトからダウンロードできる

 

 
 
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