【Jack高橋のユニバーサルフードとインバウンドの未来31】グルテンフリーの日本と世界の常識の違い その2 高橋敏也


グルテンフリー表示と区別

 今回は、グルテンフリー表示に潜むインバウンドリスクについてお話しさせていただきます。近年、日本のスイーツ市場において「グルテンフリースイーツ」のブームが拡大し、一時的な流行を超えて定着しつつあるトレンドとなっています。これは、健康志向や食の多様性への対応といった複数の要因が絡み合って起きている現象です。

 このブームの背景には、主に三つの大きな要因が貢献しています。一つ目は、健康・美容志向の高まりです。グルテンフリースイーツは、「甘いものは食べたいが、健康にも気遣いたい」というニーズに応えるものであり、「ギルトフリー(罪悪感のない)」な選択肢として人気を集めています。二つ目は、グルテンフリースイーツの主要な材料となる米粉の進化とおいしさの向上が大きく貢献している点です。そして三つ目は、インバウンド需要との関連です。欧米ではグルテンフリーの認知度が高く、ベジタリアンやヴィーガンと並んで食事の選択肢として一般的です。そのため、訪日外国人観光客の増加に伴い、ホテルやレストラン、カフェなどではグルテンフリー対応が急速に進んでおり、これもブームの大きな一因と言えます。

 しかし、この拡大するブームの裏には、日本と世界の常識の違いに起因する重大な危険要因が潜んでいます。現在、日本ではグルテンフリーに対する明確なルールが存在しません。その結果、「世界一厳しい認証」と「表示ルールの不在」が共存するという、世界との大きな格差が生じています。この表示ルールの不在が、深刻な問題を引き起こす可能性があります。

 欧米からの訪問者の中には、グルテンフリーでなければならないセリアック病を患っている方々が含まれています。日本の多くのグルテンフリースイーツの製造現場や店舗では、製造過程でグルテンの混入(コンタミネーション)が存在する環境下で製品が作られているのが実情です。
欧米の基準では、このようなコンタミネーションが存在する環境で製造された食品は、「ローグルテン表示」(Low Gluten)として、本来のグルテンフリー表示と明確に差別化されています。しかし、日本では、コンタミネーションがあるにもかかわらず、堂々と「グルテンフリー」と表示されているケースが多いのです。

 グルテンフリー(Gluten Free)とは、グルテン含有量が20ppm(20ミリグラム/キログラム)未満であることを指します。これに対し、ローグルテン(Low Gluten)は20ppm以上100ppm(100ミリグラム/キログラム)未満と定められています。このppm値の差が、セリアック病の方々にとっては健康上の大きなリスクとなり得ます。

 日本人を対象とする限り問題は生じにくいかもしれませんが、外国人観光客が増加する中で、スイーツショップが競うようにグルテンフリーの表示をアピールすることは、非常に危害リスクの高い表示となります。

 したがって、多くの店舗では、実態に合わせて「ローグルテン」または「コンタミネーション有り」の表示を行うことが必要です。特にインバウンド対応を考える際には、「ローグルテン Low Gluten Very Low Gluten」や「May contain traces of gluten/wheat.(微量のグルテン/小麦が混入している可能性があります)」といった、国際基準に準じた正確な表示を心がけていただきたいと思います。

(メイドインジャパン・ハラール支援協議会理事長)

グルテンフリー表示と区別

 
 
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