【脱炭素でスマートな旅館 国際観光施設協会エコ・小委員会 61】ウェルビーイングで持続可能な地域と観光


ウェルビーイング実現のイメージ

ウェルビーイング実現のイメージ

 日本はエネルギー自給率13%、食料自給率38%、少子高齢化と三つの大きな課題を抱える中で、地域の持続可能性が問われている。観光産業にとってこの三つの課題解決にはウェルビーイングという考え方がヒントになる。

 ウェルビーイングとは身体的な健康、精神的な健康、社会的に良好なことをいう。その実現には系統電源や化石燃料への依存から地域再生エネルギー利用を進め、農林漁業者と連携して食材を地域から調達し、食品ロスを削減し、生産性を向上することで人手不足問題に対応し、無駄のないクリーンな地域にすることだ。まずは宿泊施設のエネルギー利用の無駄のない、効率的なエネルギー利用を考えたい。

ウェルビーイング実現のイメージ
ウェルビーイング実現のイメージ

 最近話題になっている地中熱ヒートポンプは空気熱源ヒートポンプに比較して消費電力を3分の1程度削減することが可能で、余剰再エネ電力との相性も良い。日本はヒートポンプ技術先進国であり、7.0と消費効率が高い空気熱源ヒートポンプエアコンは使い勝手も良いので大変普及しているが、一番エネルギーを使う給湯は化石燃料を使った給湯器、ボイラーに頼っている。

 日本と同程度の面積のドイツやフィンランドでも日本の約10倍以上の地中熱ヒートポンプを利用している。ウェルビーイング先進国のスウェーデンもヒートポンプが進んでいて、日本と同じく石油、天然ガスは輸入に依存する一方で、豊富な水力資源や、原子力を利用した発電が行われているほか、森林地帯が広がる国土の特性もあって、木質燃料などのバイオマスによる発電や熱供給も盛んである。このため、化石燃料資源には乏しいが、エネルギー自給率は2015年には75%に達している。

 日本は山、湖、川、海と変化が多く、生活文化、食材、人情に多様性があり、地域の魅力は大きいが、それにプラスして地球環境や社会的に良好にすることで、地域住民、農林漁業者、商工業者、旅館関係者、観光客と地域に関係する人々がウェルビーイングを感じるスマートな場とすることで地域の持続性が高まる。

 環境省の活動で関わった乗鞍高原の旅館は脱炭素、循環型経済を明確に打ち出し、それが地域の自然環境を守り、価値を上げることを企業のテーマとして事業化して、利用客1人当たりCO2排出量も8キログラム/人・日と実績を上げ、事業主、社員、お客さま、地域の人たちにウェルビーイングな環境を提供しにぎわっている。科学技術立国の日本らしく三つの課題に取り組み、持続可能な地域を目指したい。

(国際観光施設協会理事 エコ・小委員会委員長、日本建築家協会登録建築家、佐々山建築設計会長 佐々山茂)

 
 
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