【テツ旅、バス旅 120】秋田内陸縦貫鉄道 鎌倉 淳


 秋田内陸縦貫鉄道は、角館・鷹ノ巣間94キロを結ぶ第三セクター鉄道です。国鉄末期に建設中止となった路線を、地元が引き継いで1989年に全通させました。ただ、沿線人口は少なく、利用者は多くありません。

 10月中旬の平日に乗りにいってみました。秋田新幹線「こまち」で角館駅に降りると、駅前広場は台湾人とおぼしき旅行者であふれています。角館もインバウンドが多くなった、と感心していましたが、驚いたことに、その多くが秋田内陸縦貫鉄道の利用者でした。100人以上のツアー客が、途中の松葉駅まで乗車し、待たせている観光バスに乗って、田沢湖を訪れるというのです。

 列車は増結して3両編成になっていましたが、それでも座席が足らず、立ち客がでるほどの盛況です。

 ボックスシートの筆者の前には、小学生くらいの男子が座りました。出発するなり、山間の農村地帯の車窓へ、熱心にカメラのシャッターを切っています。日本人からすれば何気ない風景ですが、台湾人の子どもには珍しいのでしょう。何が観光資源になるのかは、対象となる旅行者によって異なるというわけです。

 30分ほどで松葉駅に到着し、台湾人のツアー客は全員が降車。ガラガラの3両編成の列車が残されました。それでも十数人の乗客はいて、ほとんどが鉄道好きの旅行者の様子。日本人が多いですが、台湾人グループの姿もありました。このグループは全員終点の鷹ノ巣駅まで乗りました。

 全線を乗り通して、約2時間20分。途中、旅客の多少の入れ替わりはありましたが、地元住民とおぼしき利用者は数人でした。つまり、利用者のほとんどは、団体ツアーの参加者だったというわけです。

 この路線は、年間約2億円もの赤字を出していて、沿線自治体の支援で維持されています。ツアー客主体の路線を、地元出資の第三セクターとして、赤字を出しながら残すことの意味を考えると、難しい部分もあります。ただ、過疎地の鉄道を維持するには、こうした方法しかないのも確かでしょう。ローカル線を残すための、一つのモデルケースを見た気がしました。

 秋田内陸縦貫鉄道は、20年以上前から、外国人旅行者の誘致に力を入れているそうです。終点の鷹ノ巣駅近くには大館能代空港がありますし、うまく連携して、より多くの旅行者が乗るような取り組みを期待したいところです。

(旅行総合研究所タビリス代表)

 
 
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