2025年4月の訪日外国人旅行者数は、過去最多の390万人を突破した。日本政府観光局(JNTO)によれば、桜のシーズンとイースター休暇が重なったことで訪日需要が高まり、中国・韓国・台湾・米国など主要国で大きな伸びが見られた。
これは、訪日客の明確な旅行動機が数値として表れた好例であり、観光業に携わる私たちにとって大きな示唆を与えている。
では、こうした”訪日動機”にどう向き合うべきか。その鍵は、「顧客が何を求めているか」を正しく捉えることにある。
彼らが日本を訪れるのは、単に桜が美しいからではない。
「春にしか味わえない日本らしい体験をしたい」「特別な時間を家族や友人と過ごしたい」という感情や期待が背景にある。
つまり、選ばれるためには、顧客の求める”価値”に応える提案が必要不可欠だ。
観光ニーズは、季節によって大きく変わる。春は花見や自然景観、夏は避暑地や祭り、秋は紅葉、冬は温泉や雪景色など、時期ごとに訴求すべきポイントは異なる。
通年で同じ打ち手を続けるのではなく、「季節ごとに変わるニーズに合わせた施策」が求められる。
代表的なアプローチとして、たとえば春には、桜や絶景スポットをテーマにランディングページを作成し、InstagramやYouTubeなどでビジュアル訴求を行う。さらにSNSや多言語動画広告を活用して、「春の日本」の魅力を世界へ発信し、ニーズを喚起する。
そのうえでOTA(Agoda、Booking.com、Trip.comなど)では、桜ビュー確約や体験付きなど、具体的なメリットを打ち出すことで予約導線を強化できる。
OTAを活用するメリットは、グローバルな露出と信頼性の高さだ。外国人旅行者の多くがOTA経由で旅行を手配する今、彼らが検索する先に魅力的な選択肢があることが重要である。
大切なのは、「何を伝えるか」だけではなく、「誰に、いつ、どう伝えるか」である。顧客のニーズは日々変化している。その動きを読み取り、最適なタイミングで適切な施策を打つことこそが成否を分ける。
今回の記録的な訪日者数の背景には、「季節」と「動機」のマッチングがあった。
私たちもまた、地域や施設の魅力を生かし、その季節にしかない価値を世界へ発信していく存在でありたい。
(株式会社プライムコンセプト 小林義道)




