ロイヤルホールディングス(HD)は11月17日、2025年12月期第3四半期決算を発表した。売上高は前年同期比8.6%増の1220億円、経常利益は1.6%増の56億円と過去最高の水準を記録した。堅調な観光需要に支えられ、特にホテル事業が大幅な増収増益となった。外食事業とコントラクト事業は増収だったが、原材料費の上昇や出店費用の増加により減益となった。
インバウンド需要取り込み、ホテル事業は稼働率・客室単価ともに伸長
ロイヤルHDのホテル事業は、第3四半期累計期間(1月~9月)で売上高297億円、経常利益42億8400万円と、前年同期比でそれぞれ18.5%増、28.7%増の大幅な増収増益となった。国内外からの堅調な観光需要を背景に業績を伸ばした。
同社のフラグシップブランド「リッチモンドホテル」は43店舗体制で展開。第3四半期累計期間の直営ホテル稼働率は前年同期比7.6ポイント増の86.9%まで上昇した。純客室単価(ADR)も前年同期比1056円増の1万3163円と大きく伸長した。
「インバウンド比率は直近で25.3%に達しており、前年同期の19.8%から5.5ポイント上昇しています。コロナ前の2019年は16.2%でしたので、約10%、1割ほど増えています」と安倍康行社長は説明する。
インバウンド需要は今年の1~9月累計で前年同期より伸長している一方、客層にも変化が見られる。「だんだん地方に動いていって、地方のイベント企画に強く反応している。地方の例えば福岡だと韓国のお客さんが多いとか、他の地域だと他の国の方が多いとか、それぞれのホテルごとに特徴が出ている」と安倍社長は述べた。
中国リスクへの見方と今後の戦略
足元で懸念される日中関係の悪化について、安倍社長は「海外インバウンドの約半数が中国からの旅行者だが、すぐに旅行を取りやめるというところまではない」との見方を示した。一方で「2月の春節のタイミングで影響が出る可能性がある」と指摘。「国内旅行や中国以外のインバウンド需要の取り込みに向けた対応策を準備したい」とした。
客室改装で単価上昇、新ブランドも好調
ロイヤルHDは既存ホテルの客室改装を積極的に推進している。今年8月にリニューアルした「リッチモンドホテル宇都宮駅前アネックス」では「住むように寛ぐ」をコンセプトとしたレジデンス型客室を導入。藤岡担当者によれば「リニューアル効果により、月によって変動はあるが10~15%程度のADR上昇が見られている」という。
また、今年4月には新ブランドとなる「THE BASEMENT HOTEL Osaka Honmachi」を開業。1号店となる同ホテルは、リッチモンドより客室は小さいものの、共有スペースに価値を置いた新しい提案型のホテルとなっており、開業から9月末までの累計稼働率は90%を超える好調ぶりだ。
安倍社長は新ブランドについて「同じように小さな部屋でも稼働が取れていないホテルオーナーにしっかりお応えできる。我々に預けていただければ、食事や共通空間を充実させながら稼働を上げることで、オーナー側の賃料収入が上がっていく」とその狙いを説明した。
ラグジュアリーホテル展開も視野
ロイヤルHDは今年7月、リストデベロップメント株式会社と「Anantara Karuizawa Retreat」に関するホテルマネジメント契約を締結。2030年に高級リゾートエリアである軽井沢での開業を予定している。これは2024年3月に設立した合弁会社「ロイヤルマイナーホテルズ株式会社」による日本初進出となるラグジュアリーホテルだ。
中期経営計画ではラグジュアリーホテルを2035年までに21棟開業する計画を掲げており、「グループはエコノミーからラグジュアリーまでのビジネスからレジャー型のホテルの領域を拡大していく」と安倍社長は語った。
コントラクト事業との連携強化
ホテル事業の強みとして、同社は「食が最大の強み」「サービスも強みの一つ」と位置づけている。ホテル事業とコントラクト事業(飲食施設運営)との連携強化も推進。「ホテル自体のマネジメントコントラクトとコントラクトの食事のマネジメントコントラクト、宿泊と飲食を一緒にやれる会社はあまりない」と安倍社長は差別化要因を強調した。
2027年度までの中期経営計画では、ホテル事業の売上高を2024年度の351億円から455億円へ、経常利益を54億円から65億円へ拡大する目標を掲げている。直営で5店舗の新規出店を計画しており、今後も稼働率と客室単価の向上による収益性強化を図る方針だ。




