【体験型観光が日本を変える399】コメの現場で体験交流を 藤澤安良


 ミスタープロ野球、長嶋茂雄氏が89歳で永眠された。私が小学生の頃、何とかテレビが買えた家だったので、同氏が巨人軍の選手として活躍するのをテレビで見ていた。

 中継の途中に親から早く風呂に入れと言われ、からすの行水で出てくるといつもホームランかタイムリーで得点が増える場面を見た。これだけチャンスに強く期待に応える選手は他にいなかった。長嶋ファンにならない方がおかしい。

 大人になって野球はどこのファンかという話題では球団名ではなく、長嶋ファンと答えていた。選手としても監督としても、その一挙手一投足が絵になり、オーラがあり、日本の野球界の発展に貢献し、ファンに感動を与え、国民に元気を与え続けた功績は計り知れない。

 現役選手から監督、そして亡くなるまでずっと存在感があり続けた例のないまれなる存在であった。私も忘れないし、多くの国民も同じであろう。ご冥福を祈りたい。

 現在では大リーグで大谷翔平選手をはじめ多くの日本選手が活躍している。野球観戦で渡米する人も増えている。スポーツも大きな観光資源となっている。

 国内ではコメ不足による政府備蓄米放出等、コメ問題が大きく取り沙汰されている。コメ農家生まれの私は、生産者から消費者に届くまでの、(1)生産者(2)JA(3)商社(4)大卸(5)小卸(6)精米業者(7)小売店(8)消費者―と昔からある流通ルートについては承知していた。

 いくつもの中間介在業者を通って行くことによるコストは、生産者にとっても消費者にとっても決していいシステムではない。小泉農水相も流通については複雑怪奇と言い、メスを入れると言う。

 銘柄米がスーパーでの小売価格5キロ4500円となっても、生産者米価は長年上がっておらず、このままでは高齢化した生産者年齢も上がる一方で、後継者も増えない状況が続く。

 食料自給率アップや国土保全という観点からも農業を持続可能なものにするには、コメの流通の抜本的な見直しが急務である。また、コメ離れがこれ以上続くと農家は減少するばかりである。そして、食堂や弁当店の経営が危ぶまれており、弁当店の廃業が多くなっている。

 コメ作りをはじめとする食料生産産業である農林水産業は手間がかかり、気象などの自然環境に大きく影響され、地球温暖化などの気象変動のリスクを持ちながらの産業であることを理解してほしいものである。

 このコメ問題を契機に、日本の食料問題について、広く国民が理解するようになってほしい。そのためには、地方の食料生産現場に出かけ、農林水産業や食事作りなどの体験交流をして、食料生産現場がどうなっているのかを深く理解してもらい、地方を応援する気持ちも育んでほしい。

 内閣府が北方領土平和学習を応援し、教育旅行の団体に対して旅行費用の補填(ほてん)をしている。関係省庁が地方への農林水産業体験旅行を奨励し、推進することにより経済的にも地方の活性化につながることになる。単なるコメ不足問題ではなく、日本の地方創生につなげるべき大きな課題である。

 
 
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