【体験型観光が日本を変える398】 教育民泊の在り方探る 藤澤安良


 本州がいよいよ梅雨入りとなる。そんな時、爽やかな新緑の北海道へ飛んだ。その地は南知床標津町。25年前から30以上の体験プログラムを整備し、体験型観光を推進。修学旅行生を受け入れてきた。

 四半世紀の間に修学旅行を受け入れていた旅館が経営者の高齢化と後継者不足で7軒から3軒になった。それはすなわち、受け入れ人数の減少につながりかねない。
 
 そこで、修学旅行をさらに拡大するために、教育民泊を開始することとなった。受け入れ家庭の確保のためには住民の意識醸成が不可欠であり、一般社団法人南知床標津町観光協会の主催で関心のある住民や近隣市町、行政やマスコミが参加しキックオフオープン会議を開催した。
 
 基調講演では、私が教育旅行マーケットの動向や態勢整備に重要なこと等をお伝えした。その後は、いずれも15年から25年の実績を持つ一般社団法人南紀州交流公社(和歌山県)の佐本所長と一般社団法人大和飛鳥ニューツーリズム(奈良県)の辻野氏、地元同協会の井南代表理事、そして同清野事務局長がパネラーとして登壇し議論を展開した。
 
 2カ所の先進地の2人からは動画などを交えて、取り組んだ動機と経緯、これまでの実績や経済効果、地域住民が生徒との交流により互いが心高めている精神的効果等が語られた。
 
 教育現場での課題でもある「人間関係構築能力」「自然とのかかわりや共生」「食農・魚食振興につながる食育」等の教育効果について確認する機会となった。明らかに、地域振興や地方創生に大きく貢献することが実証されている。
 
 コロナ禍では教育民泊は3密を避けるという観点から全国的に受け入れ地の多くが停止した。コロナ後は家庭や教育現場の不登校・いじめ・自殺・虐待相談件数等の問題がいずれも過去最高最悪を記録するなど厳しい教育環境にあることからも、教育効果が高い教育民泊のニーズが高まっている。
 
 一方、受け入れ側では全国的に復活が遅れており、受け入れ可能人数が伸び悩んでいる。北海道でも学校規模の200~300人の受け入れ可能地域がほとんどない中での同町の取り組みとなり、学校や旅行会社の期待は大きい。
 
 同協会は、2026年度からは航空機の機材が小さい道東の中標津・釧路・女満別の3空港利用を想定し、160人(4クラス)を受け入れ目標として取り組み、後にはさらなる拡大を目指し、近隣市町との広域連携を視野に入れている。
 
 阿寒・摩周・知床と風景観光で栄えた道東の観光は、知床の観光船事故の影響もあるのか旅行会社主催の団体ツアーバスが少なくなり、レンタカーを利用した個人旅行が頼みの綱である。航空機は決して搭乗率が高いとは言えない状況である。
 
 今年は戦後80年。北方領土国後島が見える当地での平和学習はキラーコンテンツである。さらに従来の多くの体験プログラムに加えて教育民泊が加われば、道東への修学旅行拡大に大きく貢献するものと確信している。この取り組みの到達に向け見届け応援したい。

 
 
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