【VOICE】農泊でつなぐ、地域と新しい風 白峰林泊推進協議会 事務局長 山口隆氏


山口氏

訪日客からも注目の農山漁村
共通目標掲げ、地域文化を守る

 石川県の最南端、白山市白峰地域で活動する当協議会は、農泊インバウンド受け入れ促進重点地域を対象とした「令和7年度地域の滞在プランコンテスト」に応募する機会があり、「自然の聖地白山―いのちの水を巡る旅」を提案しました。

 滞在プランの根底にあるのは、自然への畏怖と感謝、そして自然と共にある日常の暮らし(民俗・食・芸能等)の体験です。白山は、古来より命の水をもたらす「農業の神」として、また、航海の目印ともなることから「海の神」として、古くから自然崇拝の対象でした。

 白山、富士山、立山等の山岳信仰は、日本の大きな魅力の一つといえます。世界には、多種多様な文化があり、観光においてはそれらが旅先となります。農泊は、自然と共に生きている人々の暮らしや文化、つまり「日本らしさ」を伝える最適なプログラムであると感じています。

 しかしながら、日本の多様な文化を大切につないできた農山漁村は、時代とともに変容し続け、本地域においても高齢化、過疎化が急速に進んでいます。それに伴い、空き家の増加、雇用の縮小、文化の継承、地域コミュニティの維持などが大きな課題になっています。

 「このままでは、歴史、文化も地域も消滅してしまう」。そんな危機に面しているなか、白峰の価値を改めて評価してくれる地域外の人々との出会いがありました。本地域は、ユネスコ世界ジオパーク、ユネスコエコパーク、国立公園が重複する日本唯一の場所で、主に大学生や留学生が日本の生活文化やサステナビリティ、自然環境などを体験するフィールドとなりました。これらの活動を通じて、日常の生活が外国人にとって魅力的であることを認識しました。

 また、これらの縁が広がり、まちづくりや古民家再生を手掛ける事業家、学識者のネットワークが生まれ、地域まるごと活性化を目的としたまちづくり会社「株式会社YOSITAI」が設立されました。現在では、当協議会の活動の中心となり古民家を活用したホテル経営、地元文化の体験プログラムなどの観光振興による地域づくりを進めています。「私たちだけでは白峰を守れない」ということを認識することが、新たなまちづくりの一歩になりました。

 日本の農山漁村の文化が、これからインバウンドの注目を浴びるものと感じています。しかし、それらを生かすには地域内外の人々が、それぞれの分野で個性を発揮しながら連携して観光に取り組むとともに、地域の文化を守り地域の持続性を高めるという共通の目標を掲げ取り組まなければならないと感じています。


山口氏

 
 
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