【地域創生と観光ビジネス87】韓国夜間観光フォーラム「夜の観光消費と地方戦略」統営で 千葉千枝子


 韓国の統営(トンヨン)という街を、皆さんはご存じだろうか。釜山から車で約2時間、慶尚南道(キョンサンナムト)にある海洋観光都市で、一帯は国立公園に指定されている。滞在型のリゾート保養施設が海沿いに建ち並び、ヨットハーバーもある。人口は13万人弱。埼玉・狭山市と友好都市関係を結んでいる。

 この統営で去る10月23日、「大韓民国夜間観光フォーラム」が開催され、基調講演とパネルディスカッションに登壇した。題して「夜の観光消費と地方戦略」。日本のナイトタイムエコノミー促進のための施策や現状、地方都市における夜間観光のあり方、税収効果の試算などを事例紹介した。星空観光やナイトサファリ、そして夜景ビジネスなどのコンテンツを手持ち画像で展開して、多くの聴衆の真剣なまなざしを感じとることができた。第2部では、韓国の観光専門家ら有識者たちとのパネルディスカッションにも登壇した。質疑応答は活発で、日韓の夜間観光の政策の違いや今後の発展性、課題についても質問が及んだ。

 会場を埋め尽くした110名ほどの聴衆のほとんどが、近隣市町村の首長や観光関係者たちだ。というのも、主管は大韓民国文化体育観光部・韓国観光公社。国家プロジェクトとして推進しており、今回の舞台・統営は「夜間観光名誉都市」の第1号として市長による宣言式も行われた。

 式後のエクスカーションでは、スニーカーに履き替えて、ライトアップされた橋や港湾を一望できる南望山(ナムマンサン)の市民公園などを関係者らと散策した。「DIPIRANG(ディピラン)」と呼ばれるメディアアートの仕掛けが、高台にある公園への夜の来訪を促している。夜間観光の先導的な都市として、統営は今後、多くの観光客を迎え入れることだろう。

 日本は近年、観光を主要産業に、確実に数字を伸ばしてきた。また、学問として確立するに至り、理論や実践、人材育成のノウハウも蓄積を始めた。イン・アウトバウンドは表裏一体。そうしたことを深く感じた講演旅だった。

 さて、筆者に続いて講演した観光学博士でイベントネット代表の嚴相鎔(オム・サンヨン)氏は、韓国夜間観光の重要性を中小企業、それも小規模事業者のチカラが重要だと語った。韓国の地方部には、街なかの飲食店など零細の事業者が数多い。それは日本においても同じことが言えよう。裾野が広いツーリズム産業において、どこに光をあてるかで、その成果は大きく変容する。例え零細であっても、わがこととして観光産業に参画を促すことで、雇用の創出や波及効果も見込める。

 今回の招聘(しょうへい)国際会議のオファーは、今年7月にキックオフした「ツーリズム総合研究所」からの依頼。オム先生とは総合広告会社オリコムの吉野忠局長を通じて知りあった。また、日本観光振興協会所属で大学講師の全相鎭(ゼン・サンジン)氏にも同行いただいた。われわれを乗せてオム先生自らがハンドルを握り、釜山・金海国際空港と統営間の片道約120キロを同乗させてもらった。寝食をともにした楽しい3日間だった。この場を借りて、関係者の皆さまには深く御礼申し上げます。

 最後に。統営は海産物の宝庫で、ホヤやホタテ、カキ、そしてアワビの釜めし「チョンボクトルソッパプ」が超・絶品でした。

 (淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)

 
 
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