【観国之光 517】深刻化するクマ被害 客、従業員の安全確保を 観光経済新聞 論説委員 内井高弘


国もクマによる被害対策に乗り出した(会議のまとめを行う木原官房長官=首相官邸HPから)

国もクマによる被害対策に乗り出した(会議のまとめを行う木原官房長官=首相官邸HPから)

 以前、この欄でも取り上げたが、住民がクマに襲われる被害が前にも増して深刻化している。特に、岩手県北上市の温泉地で露天風呂を清掃していた男性がクマに襲われ、遺体として見つかった事件は衝撃的だった。

 観光地でもクマの出没が相次いでおり、秋の紅葉シーズンにあって、旅行を控える動きもある。ある温泉地の旅館経営者は、「山に囲まれた地域でもあり、いつクマが出没してもおかしくない。『クマが怖くて行けない』というお客さまもいて、キャンセルも出ている」と声を落とす。

 日本気象(大阪市)が登山者を対象に実施した「クマと登山に関するアンケート調査」(3549人回答)によると、クマの出没により、77%の人が「不安で慎重になったり、登山をためらう」と回答。

 また、登山計画を立てる際、クマの出没情報を「最優先で考慮」「重要な判断材料」と回答した人が合わせて8割を超えた。

 政府は10月30日、「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」を初めて開いた。木原稔官房長官は「死者数は本日までに12人となり、国民の安全・安心を脅かす深刻な事態」と強調。
 その上で、緊急銃猟を実施することができる者を拡大するための措置や、警察官や狩猟免許を有する公務員が、市町村による緊急銃猟に協力するなどといった追加的・緊急的な対策を含む「クマ被害対策パッケージ」を11月中旬までに取りまとめる考えを示した。

 同日には、文部科学省がクマ被害から子供を守るための指導例を全国の教育委員会などに通知した。その中には、空のペットボトルを握って鳴らす「パコパコ」という音をクマが嫌うため、クマよけベルとともに空のペットボトルを携行するよう紹介している。

 また、人の生活圏への出没防止のため、たとえば生ごみについては「屋内で保管し、収集日当日に出すようにする。取集場所にはクマ対策ごみ箱を設置するなど、クマが開けることができない構造のごみ箱を導入する」と提案する。

 クマよけのベルや撃退スプレーを装備し、準備万端で臨むしかない。万一、遭遇した際は静かに後退するなどして距離をとる。襲われた時は腹ばいになり、頭や顔を守る姿勢をとることが有効とされる。

 宿泊施設も宿泊客や従業員の安全を守るため、自治体などによる出没情報の提供のほか、対策マニュアルなどを示すことも考えてみてはどうか。

国もクマによる被害対策に乗り出した(会議のまとめを行う木原官房長官=首相官邸HPから)
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