【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 221】採用対策⑫ 佐野洋一


 (17)リファラル採用(続き)

 リファラル採用―知人の紹介による採用―が近年、注目されるようになってきたことを前回お伝えした。紹介による採用は昔からあったが、これまでは「話があれば応ずる」という程度の消極的な対応に終始していたところが多いかと思う。これを改めて「制度」として公式化していくことを考えたい。やることの方向性は、大まかに「呼び掛け」と「インセンティブ」の二つである。

 まず、会社として「紹介による人材採用」を積極的に奨励する意思を表していこう。社内ミーティングなどで「紹介したい知人がいればぜひ教えてください」と呼び掛けを行ったり、掲示板やグループウェアに募集情報の掲載などをしていくことだ。またどこの会社にも「顔の広い人」というのがいる。そういう人に、個別に「誰かいないか?」と当たってみるのは効果的である。いずれも、一度伝えたぐらいではすぐに忘れられてしまうので、何度も繰り返し促していくことだ。

 インセンティブとは、行動に駆り立てるための誘因―ありていにいえば「報酬」である。「紹介された人を採用することになったら〇万円」という形で、紹介者に「報奨金」を支給する制度がまず考えられる。経営者の考え方や企業風土によっては、金銭報酬がなじまないかもしれない。代わるものとして、例えば食事券とか宿泊券をプレゼントするといった方法もあるだろう。昨今、1人採用するために数十万円から百数十万円といった費用がかかることも珍しくない。それを思えば、言い方は悪いが「安いもの」といえる。

 しかし、こうした物的インセンティブだけでなく、紹介してくれたことに感謝の気持ちを示して、「紹介して良かった」と思える雰囲気を作ることが何より大切だ。

 リファラル採用は、紹介者が社内、もしくは親しい関係にある人であることがポイントだ。だから、「どんな仕事、勤務形態になるか」「どんな人に来てほしいか」といったイメージを共有しておくことができる。また紹介者からは、当人の来歴や人柄、能力といった情報を事前に聞き出すことも可能だ。こうした利点を生かして細やかに対応していけば、ミスマッチを予防することもできる。

 (18)アルムナイ採用

 「アルムナイ」とは「卒業生」とか「同窓生」といった意味。つまり、かつて自社で働いていたが、何らかの理由で退職・離職した「元従業員」を指す。

 旅館でも、結婚、出産・育児、傷病、さらには家族の介護などの理由から、職場を離れる人は少なくない。しかし時がたち、生活や家庭環境が落ち着いた結果、「もう一度この会社で働きたい」と思う人は意外と多い。「アルムナイ採用」とは、こうした人を呼び戻す活動である。

 アルムナイ採用のメリットは、何より即戦力として頼れる点にある。業務の流れやお客さま層、社内ルールなどを理解しているので、教育や研修にかかる手間やコストをかなり圧縮できる。また、旧知のスタッフや、時にはリピーター客とのつながりが、そのまま現場力強化や職場の活気づくりにつながる。

 次回は、このアルムナイ採用の具体的なやり方や、現実的な留意点などについて考えていきたい。

 (リョケン代表取締役社長) 

 
 
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