前回お伝えした「スキマバイト」は、数時間~数日単位の地元短期労働である。これと似て非なるものに、リゾート滞在や旅行をしながら働きたい人と雇用側を結ぶマッチングサービスがある。一般化した呼称はなく、ここではひとまず「リゾートバイト」と呼ぶ。
「リゾートバイト.com」「はたらくどっとこむ」「リゾバ.com」などの大手、近年利用が広がっている「おてつたび」などが挙げられる。前3者は主に1カ月以上、「おてつたび」は最短2~3日からだが、1~2週間程度が中心だ。給与と別に雇用主が支払う手数料は、いずれも公式には非公開だが、前3者がおおむね給与の30~40%程度、「おてつたび」は契約成立案件ごとの手数料発生で、定額制プランも用意されている。
地元で集める一般アルバイトやスキマバイトとの大きな違いは、「全国から」の応募があり得る点、また一定期間「住み込み」で働きに来る点にある。
受け入れには、寮か、それに代わる居住スペースの用意が前提となる。寮がない場合は、空き部屋や近隣アパートの借り上げなどで対応することになろう。
参加者は「新しい土地での出会い」や「地域との縁づくり」「SNS発信」といった、金銭以外の動機や関心を持っている。だから募集に際しては、「仕事内容・期間・待遇」などの基本的な要項や、居住環境、食事の有無といったことに加えて、ここだからできる体験や交流機会など、「現地ならではの魅力」を丁寧に伝えることに、わりと意味がある。例えば、受け入れ側が地域を案内してあげたり、体験の場を用意してあげたりすることができれば、モチベーションや満足度も高まるだろう。そして期間終了後も、宿や地域のファンになってもらえる効果が期待できる。
従来の地元アルバイト募集だけでは手の届かなかった層にアプローチできるので、自館の特性や資源を見直し、募集の打ち出し方や受け入れの工夫を積み重ねていけば、今後の経営に新しい風をもたらす糸口ともなろう。
(17)リファラル採用
「リファラル」とは「推薦」とか「紹介」という意味。つまり「リファラル採用」とは、平たく言えば「紹介採用」のことで、たいていの企業で昔からあった採用手段である。近年、わざわざこんな用語で呼ばれるようになったのは、これを「仕組み」として促進しようとする動きが活発になってきたことによる。求人媒体などで思うような成果が得られにくくなり、また人材要件のミスマッチも多くなっている中で、既存従業員やその知人を通じての紹介は、信頼性の高い人材確保につながるというメリットが再評価されている。
主としてIT業界やスタートアップ企業、そして大企業で導入が進められてきた。しばしば専門的技術能力が求められ、かつそれら人材の流動化(転職)が問題となっている世界において、マッチング精度や定着率の高さが注目されている。
旅館業界でも、知人紹介や縁故採用は古くから慣行としてあるが、採用戦略の一環としての本格的な制度整備や活用は、まだあまり進められていないと思われる。次回はこのことの続きを述べた上で、それ以外の対策に話を移していく。
(リョケン代表取締役社長)




