海女文化を守り、インバウンド富裕層誘致に挑戦
公益社団法人伊勢志摩観光コンベンション機構は10月30日、高付加価値なインバウンド誘客と持続的な観光地づくりを目指す「iseshima connect プロジェクト」を発足したと発表した。伊勢神宮、真珠、海女などをシンボルとする観光体験の開発や地域プレイヤーの育成を目指す。
プロジェクトは「ISESHIMA: A place of natural beauty, ancient rituals and timeless cycles – forever renewing.」をタグラインに掲げ、伊勢志摩の歴史・自然・文化・人々の営みを「ひとつの物語」として体験できる仕組みを整備する。
背景には地域の深刻な環境変化がある。同機構によると、伊勢海老は2010年後半から漁獲量が激減。黒潮大蛇行の影響でアワビ・サザエの漁獲量も減少傾向にあるという。シンボルである海女も高齢化などの影響で2023年には514人と、50年間で約8分の1に減少した。
一方、訪日外国人向けアンケートでは、伊勢志摩地域についてよく知らないと答えた人が全体の64%。伊勢神宮についても約78%が理解度が十分でないと回答するなど、認知度の低さが明らかになった。再訪問意向は85%が「大変満足」と答え、ポテンシャルは高い。
プロジェクトは主に4つの取り組みを推進する。「伊勢志摩の物語をめぐる旅コンテンツの構築」「地域と連携した2次交通と宿泊施設の滞在価値向上」「欧米国を中心とした海外への発信強化」「地域づくりを担うプレイヤーの発掘とネットワークの創出」だ。
具体的には、10月8日に米国サンディエゴの「Japanese Friendship Garden」に出展し、現役海女の林喜美代さんによるトークイベントや伊賀組紐を使った真珠アクセサリー作りのワークショップを開催。翌9日には同市の「Univercity Club San Diego」でダン・ホム名誉会長やチュラビスタ市のジョン・マッキャン市長ら政財界から約40名を集め、林さんと志摩観光ホテル総料理長の樋口宏江さんによる伊勢志摩の食を切り口としたディナートークを実施した。
地域内の取り組みでは、神棚づくりなどの伊勢信仰や伝統文化を伝えるワークショップ、伊勢の伝統産業である擬革紙アート体験、真珠や海女文化をテーマとしたコンテンツを開発中で、1月下旬の提供を目指している。
伊勢志摩観光コンベンション機構の須崎充博専務理事は「単に観光客数を追うのではなく、地域経済への高い波及効果をもたらす、欧米やアジア圏の富裕層、そして知的好奇心を持つ国内富裕層を主たるターゲットと定める」と語った。
また「観光消費を、しっかりと地元の食、工芸品、その他の産業へ広く波及させることで、地域経済全体の持続的な好循環を確立する」と強調。「伊勢志摩が世界中の方々の『憧れの地』となり、世界に誇れる観光地としての地位を確立すること」が同機構の使命だとしている。
・公式HP: https://traveliseshima.com





