アラブ首長国連邦・アブダビで10月9日から15日まで開催された「IUCN世界自然保護会議(WCC)2025」において、日本から立候補した中厚裕氏(酪農学園大学教授)が南・東アジア地域選出の理事に選出された。定員5名に対し7名が立候補する中での選出となった。日本からは1994年以降、継続して理事が選出されている。
自然保護の国際会議に約1万人が参加
国際自然保護連合(IUCN)が主催する本会議には、対面またはオンラインにより、約1万人が参加した。日本からは外務省(国家会員)および環境省(政府機関会員)に加え、IUCN日本委員会(IUCN-J)などのNGOが参加した。
会員総会では会長選挙も行われ、前回WCCで選出された現職のラザン・アル・ムバラク氏(UAE)が信任された。また、生物多様性保全等に係る40件の動議のうち39件と、IUCNのガバナンスに係る5件の動議のうち4件が承認された。
承認された主な動議には、ネイチャーポジティブ達成に向けた信頼性の高い貢献を促す枠組みの構築支援や、自然関連の影響と依存関係のより適切な評価・報告・管理を要請する内容などが含まれた。また前回WCCで暫定的に設置された「気候危機専門委員会」を「気候行動専門委員会」として正式な委員会として承認する動議も可決された。
今回のWCCでは「Abu Dhabi Call to Action(行動への呼びかけ)」も発出され、自然保護と人類の幸福のために5つの方向性について、緊急かつ実践的な行動を促進するよう国際社会に呼びかけた。
環境省は会期中、アジアにおける「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」達成に向けた進捗と課題をテーマとしたイベントを主催。さらに日本からは8つのイベントに登壇し、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)や自然を活用した解決策(NbS)等、日本の生物多様性保全の取組を紹介した。
なお、日本の「生物多様性国家戦略2023-2030」の策定や実施が昆明・モントリオール生物多様性枠組のターゲット4(絶滅危惧種の絶滅阻止や絶滅リスクの大幅削減)に貢献しているとして、他の25カ国とともに「Reverse the Red」より「Reverse the Red Awards Medal」を受賞した。
また、日本の生物多様性基本法は「World Future Council」による「World Future Policy Award 2025」のファイナリストにも選出された。
IUCNは1948年に設立された自然保全に関わる国家、政府機関、非政府機関で構成される世界最大規模の国際的な連合体で、現在170以上の国から1,536団体が会員として参加している。日本からは環境省が1978年に政府機関会員として加盟し、外務省が1995年に国家会員として加盟している。




