都営バス「品97」は、品川駅高輪口から、高輪、天現寺を経て外苑東通りを北上し、四谷三丁目を経由して新宿駅西口に至る路線です。1日5千人以上が利用する、都営バスの主要路線の一つですが、10月のダイヤ改正で減便されてしまいました。
減便の理由は、運行委託先のはとバスの乗務員不足です。都営バスは五つの営業支所で、はとバスに管理・運行を委託していますが、そこで運転士が不足してしまったのです。結果として、ダイヤを維持できなくなり、減便に追い込まれてしまいました。「品97」だけでなく、19の路線で10月から減便となっています。
都営バスの減便傾向は、いまに始まったことではありません。この数年は、毎年200~300便の規模で減便してきています。
ただ、ダイヤ改正時に、減便の理由として乗務員不足を明示したことはありませんでした。委託先の事情とはいえ、今回初めて、都営バスとして運転士不足の状況にあることを認めた形になります。地方で常態化しているバス運転士不足が、都心部でも顕在化してきた、と捉えることもできるでしょう。
ダイヤ改正後の10月8日には、都営バス運転士の採用試験の最終合格者が発表されました。合格者数は83名。採用枠は100名程度でしたので、予定より20名近く少なかったことになります。都営バスは近年、採用試験を年2回に増やして人材確保に力を入れていますが、計画通りに採用できていない様子がうかがえます。
運輸免許統計によれば、24年度に警視庁(東京都)で大型二種免許を交付された人数は911人です。この数字をみると、年2回ある都営バスの運転士採用で、合格者数が80人というのは、かなり大きな数字であることがわかります。来春の採用でも80人程度の枠を設けていますが、大型二種免許の保持者が限られるなか、充足するのは簡単ではないでしょう。
今回、都営バスに採用された運転士は、来春から営業路線で運行に従事する予定です。それが採用予定数を満たせなかったため、来春に、減便路線のダイヤが元に戻ることはなさそうで、さらなる減便が発生する可能性すらあります。
改めていうまでもありませんが、バスの運転士不足は全国的な問題です。首都のバス運営者である都営バスがこの状況となると、その深刻さを改めて痛感せざるを得ません。
(旅行総合研究所タビリス代表)




