観光庁の地域魅力向上事業の地域観光サポーターとして、北海道のいわない温泉を訪ねました。いわない温泉は北海道の積丹半島の付け根にあり、新千歳空港から小樽までJRの特急で、その後はバスで移動します。
私へのご依頼内容は、いわない温泉が観光地になるための地域づくりや魅力発信のポイントに関するアドバイスでした。
事前にオンラインで、顔合わせと支援内容の確認、また地域を紹介していただきました。
恥ずかしながら、いわない温泉は初訪問でしたので、支援実施の前日に入り、宿のオーナーさんと交流して、温泉に入浴し、準備を整えました。
結果から申し上げれば、非常に熱心な地域と事業者さんで、何より地域が一体となっており、とても仲が良かったことが心に残っています。
いわない温泉は、外からの集客を目的とすると同時に、未来の温泉保護のために、地域住民の方々に温泉の価値を知らしめるということが大きなテーマでした。
こうした地域課題は、事業に参画するメンバーがわが事として明確に捉えており、さらにモチベーションが前向きだったので、私自身も支援がしやすかったです。
私からは具体的に以下のアドバイスをしました。
地域の方に理解していただけるように分析表を分かりやすく、平易な言葉で解説した方がいい。その解説の仕方として、いわない温泉と同じ化石海水型の温泉を有する新潟県松之山温泉を事例に、上手な伝え方を示しました。
いわない温泉は、炭酸水素塩泉の源泉も保有します。よって、化石海水型の温泉と炭酸水素塩泉の2種類の入り方などは、熊本県黒川温泉のWebサイトをご覧いただきました。黒川温泉は各宿が持つ源泉の泉質を一目瞭然に表記しています。加えて、利用者にとって大変分かりやすい入浴順までも提示しています。
さらに、私が提唱する「マイ温泉」の概念を説明しながら、いかに温泉をエンターテインメントとして伝えるか、が大切であることを強調しました。
地域として温泉を活用した事例は、火山である十勝岳との関わりを掘り下げた十勝岳周辺の温泉を、また温泉地ならではの歴史的背景を掘り下げた群馬県七大温泉街道をご紹介しました。
実は、いわない温泉の皆さんは、すでに源泉を科学的に分析しており、加えて医師とも連携しています。そうした科学的かつ医学的な知見をベースにして、一般の方、あるいは地域の方に向けた優しい案内文の作成が必要です。その上で、宿のスタッフの皆さんがお客さんに解説ができるようになることが課題でしょう。
温泉文化がユネスコ無形文化遺産に早期登録されるとしたら、2028年といわれています。その日のために、温泉を分析し、医師との協力体制のもと、多くの方にその価値を具体的に分かりやすく知らしめようとするご努力には頭が下がりました。
そしていわない温泉には魅力的な宿もありました。
1泊目にお世話になった「高島旅館」は客室13室。予約は電話のみ。支払いはキャッシュのみ。冬はやや落ちるものの、春から秋にかけての稼働率は100%。成功の秘訣は岩内ならではの食材を出すことにとことん徹しているから。宿のオーナーのビジョンがお客にも伝わり、共感を得ているからでしょう。
2泊目は「いわない高原ホテル」にお世話になりました。積丹半島を一望できる絶景の宿。その景観に加えて、自社醸造のクラフトビールと美術館が推し。なんと私設の荒井記念美術館にはピカソの版画267点が所蔵されているのです。
トータルで観光のポテンシャルあふれる地域でした。
(温泉エッセイスト)




