【テツ旅、バス旅 112】石狩沼田駅 鎌倉 淳


 JR北海道の留萌線は、深川―石狩沼田間を結ぶローカル線です。かつては増毛まで路線がありましたが、16年冬に留萌―増毛間が廃止され、23年春に石狩沼田―留萌間も廃止されてしまい、現存区間のみとなってしまいました。この区間も26年3月31日限りでの廃止が決まっています。

 6月の平日午後に訪れてみました。ディーゼルカーが1両のみの編成で、乗車したのは10人ほどです。沿線住民の高校生と中高年、そして鉄道ファンとおぼしき旅行者が、それぞれ数人ずつでした。

 列車は深川駅を出発すると、石狩平野の北限の田園地帯を横切って進みます。途中の停車駅は四つ。秩父別駅で1人が降りたほかは、全員が終点の石狩沼田駅まで乗り通しました。

 石狩沼田駅は23年春までは留萌線の途中駅でしたので、終着駅としての存在は3年間限定です。当初は、深川―留萌間の全区間が一括で廃止される見通しでしたが、通学の高校生に配慮して、石狩沼田までが3年間限定で存続することになったのです。

 石狩沼田駅からは、かつて、札沼線という別の路線が札幌まで伸びていました。同線は、新十津川―石狩沼田間が1972年に廃止され、北海道医療大学―新十津川間も2020年に廃止されています。二つの路線が段階的に廃止されていき、石狩沼田駅は乗換駅から途中駅となり、終着駅となり、ついに駅そのものが廃止されるわけです。

 現在の石狩沼田駅は1面1線で、交換設備のない小駅です。しかし、ホームは鉄骨造の駅舎に接していて、しっかりした上屋に覆われています。線路の反対側には、使われなくなった島式ホームも見られます。

 改札口を抜けると広めの待合室があり、出札口の跡には三つ分のスペースがあります。駅舎の外には大きなロータリーが広がっていて、道路が街中へと延びています。この駅が、かつて複数路線が乗り入れるターミナルで、町の玄関口であったことの余韻が、いまも感じられます。

 廃線後の駅舎については保存が検討されていて、ミニ博物館などの形で活用する案が浮上しているそうです。駅の隣には、公設民営のブルワリーが設置され、この春から醸造を開始しています。かつてのターミナル駅はその機能を失いますが、跡地は地域の観光拠点という、新たなターミナルとなっていくのでしょう。

(旅行総合研究所タビリス代表)

 
 
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