旅館・ホテル業界にとって、いま最も焦眉の課題である採用対策について考えている。ここまで、日本人を前提とした対策を述べてきたが、外国人労働者について触れないわけにはゆかないので、これについて見ていく。
すでにかなりの数の外国人労働者を雇い入れているところは多いが、一方で、そうでないところもあるので、あらためて全体像を軽く整理しておきたい。
宿泊業で使える制度としては、「特定技能」「育成就労(技能実習に代わるもの)」「技術・人文知識・国際業務(略して「技人国」)」の三つが挙げられる。まずは「特定技能」から…

(21)特定技能(1号・2号)
日本の深刻な人手不足を背景に、一定の技能と日本語力(N4以上)を持つ外国人が即戦力として働けるようにした制度である。「特定技能1号」は「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」。在留期間の上限が通算5年であり、その範囲で、在留期間を延長するための期限更新を、個々の外国人ごとに定期的(1年・6カ月ごとなど)に行う。働けるのは「特定産業分野」の対象業種。宿泊業もその一つになっていて、「フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事する業務」に携わることができる。また「当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:館内販売、館内備品の点検・交換等)に付随的に従事することは差し支えない」とされている。
「2号」は「熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」。在留期間に上限がなく更新可能な資格で、一定の要件を満たせば、家族(配偶者、こども)の帯同(日本で一緒に暮らすこと)が認められるほか、永住権の取得も可能となる。宿泊分野は、2023年8月から対象に加えられた。
宿泊業の場合、「1号」の5年内に2年以上の「指導者」としての実務経験があり、かつ実務レベルの技能試験に合格すれば、「2号」へ移行することができる。
特定技能外国人は、一般的には海外の送り出し機関や「登録支援機関」を通じて募集・契約する。雇用する事業者は「受け入れ機関」として、1号特定技能外国人に対して、定められた各種の支援(出入国時の空港への送り迎え、日本語習得、相談・苦情対応、日本人との交流促進など)を適切に行う義務があるが、これらを「登録支援機関」に委託することもできる。ちなみに、2号特定技能外国人は、「受け入れ機関または登録支援機関による支援の対象外」(つまり支援の必要はない)とされている。
(リョケン代表取締役社長)




