長良川鉄道は、岐阜県の美濃太田から、郡上八幡を経て北濃に至る72キロの第三セクター鉄道です。国鉄時代に特定地方交通線に指定され、1986年に三セクに転換されました。以後、沿線自治体が鉄路を支え続けています。
先日、久しぶりに乗車してみました。美濃太田駅から美濃市までは濃尾平野の北端を走り、美濃市から先は長良川に沿った景色のいい渓谷路線となります。乗り通すのに2時間以上かかりましたが、車窓を楽しんでいると、あっという間でした。終点北濃は趣のある木造駅舎で、国鉄時代の転車台も保存されています。
帰りは、郡上八幡で下車して、お城を見学し、町歩きをしてみました。お城は現存最古の木造再建天守。町並みには昔ながらの雰囲気が残されています。歴史的にも文化的にも魅力的な城下町でした。
長良川鉄道は、車窓も良く、沿線に有力な観光地を備えた、ポテンシャルのある路線といえます。
ただ、鉄道の利用者は多くありません。筆者が乗車したときも、美濃太田出発時の旅客は十数人のみ。しかも、郡上八幡までに大半が降りてしまい、終点北濃まで乗り通したのは、鉄道ファンとおぼしき旅行者が数人だけでした。
かくいう筆者も、郡上八幡からの帰途は、高速バスをつかまえて名古屋に出ました。名古屋までの所要時間は、鉄道が約3時間に対し、高速バスなら1時間余。これだけ差があると、高速バスを選んでしまいます。
現在の長良川鉄道の主な利用者は、通学で乗車する高校生です。しかし、高校生は今後減少が見込まれています。鉄道施設の老朽化も進んでいて、更新を考えると、鉄道全線を維持し続けるのは難しい局面にさしかかってきました。そのため、沿線自治体では、部分廃止の検討を始めているそうです。
通学生が減るなら、それ以外の旅客を集めなければなりません。期待はインバウンドでしょう。車窓の良さと郡上八幡の魅力をPRし、観光列車を増やせば、人気が高まるかもしれません。速達性では高速バスにかないませんが、「乗って楽しい列車」であれば、観光客は注目します。
ただ、観光客が利用したとしても、多くは郡上八幡で降りてしまいます。その先の区間の維持は難題かもしれません。終点北濃の先には、奥美濃のスキー場や白川郷が控えます。そうしたエリアと連携できればいいのですが。
(旅行総合研究所タビリス代表)




