JR各社のインバウンド関連の鉄道運輸収入が増えています。25年3月期決算によると、JR東日本が428億円、JR東海が1170億円、JR西日本が409億円に達しました。JR本州3社合計で2007億円となり、初めて2千億円を突破しています。JR九州の年間の鉄道運輸収入が1600億円程度、東急電鉄は1500億円程度なので、インバウンド利用だけで、大手鉄道会社1社分に匹敵する金額になるわけです。人口減少に直面する日本の鉄道各社には一筋の光明でしょう。
増加が著しいのはJR東海です。前年度は810億円でしたので、44%の大幅増です。JR東日本が11%増、JR西日本が15%増なので、JR東海の伸び率の高さが際立ちます。
その理由は、日本観光の「ゴールデンルート」にあたる、東海道新幹線を抱えているからでしょう。実際、東海道新幹線に乗ると、以前にも増して外国人旅行者の姿が多くなっています。これまで東海道新幹線は「ビジネス路線」といわれてきましたが、最近は外国人旅行者の存在感が高まっていて、時間帯によっては「観光路線」の雰囲気すら漂うようになりました。
JR東日本は、会社の規模の割に、インバウンド収入は少なめです。東京から東北や甲信越に向かう外国人旅行者が、東海道方面に比べると少ないからでしょう。それでも年間400億円規模の収入ですので、かなりのインパクトです。
外国人旅行者がこれだけ増えたのですから、駅や車内には、相応の設備を整えてほしいところです。最近の課題としてよく指摘されるのが、列車内の荷物スペースの不足でしょう。大きなスーツケースを抱えて、置き場所に困っている旅行者をよくみかけます。
それに加えて、新幹線で気になるのは、駅の待合室の貧弱さです。たとえば、東京駅の新幹線改札内の待合室は、いつも人であふれています。最近のターミナル駅はエキナカの商業施設が充実していますが、無料で座れるスペースは多くありません。待つ場所に困った旅行者が、コンコースやホームで立ち尽くしたり、座り込んだりしている姿も、日常的にみられます。
インバウンドの増加で収入が増えているのですから、インバウンド旅行者の快適性が向上する設備に還元してほしいところ。旅行者がくつろいで列車を待てるスペースが増えればいいのですが。
(旅行総合研究所タビリス代表)




