Bing Han氏
次世代モビリティが課題解決
アフターコロナの活気が戻り、多くの観光地ににぎわいが生まれつつある一方で、多くの地方が共通して抱える構造的な課題が浮き彫りになっています。それは、2次交通の脆弱(ぜいじゃく)性です。路線バスの減便やタクシー運転手の不足は、駅から先の目的地への移動を困難にし、「行きたい場所に行けない」という体験は、お客さまの満足度を下げ、地域経済の機会損失に直結しています。
この課題に対し、近年「シェアモビリティ」という解決策が注目されています。しかし、都市部で成功しているこのモデルも、地方観光地では運用上の大きな壁に突き当たります。最大の課題は「充電」です。車両の回収、充電、そして元の場所への再配置。こうした日々の地道な作業は、ただでさえ人手不足に悩む現場にとって大きな負担であり、そのための人件費や電力コストも、決して無視できません。
そこで私たちが提案したいのが、「充電作業そのものをなくす」というアプローチです。その鍵を握るのは、太陽光エネルギーの活用に他なりません。私たちHelioXは、駐車中に太陽光で自らエネルギーを賄い、充電作業が一切不要であるソーラーモビリティの開発を進めています。日当たりの良い場所さえあれば、宿泊施設の玄関前や観光施設の駐車場がすぐにモビリティステーションになります。運営の手間とコストから解放され、本来のおもてなしに集中しながら、お客さまに自由で快適な移動体験を提供できます。
加えて、観光地のレジリエンス、すなわち災害への対応力向上にも貢献します。停電時、モビリティが蓄えた電力は、お客さまや地域住民のスマートフォンに充電するための非常用電源となります。これは地域の安全・安心を守る新たな価値と言えるでしょう。
次世代モビリティがもたらす価値は、移動手段や電源だけにとどまりません。将来的には、お客さまの移動データを匿名で分析・活用し、より高度な観光戦略を描くことが可能になります。例えば、どの時間帯にどのスポットが混雑するかを把握し、お客さまを空いている名所へ誘導したり、周遊データに基づいた新たな体験型ツアーを企画したりと、地域全体の魅力向上と消費活性化につなげることができるのです。
地方の交通課題を持続可能な形で解決し、お客さまには新しい旅の楽しみを、そして地域には新たな活気をもたらす。太陽エネルギーを核とした自律的な交通システムを、地域が一体となって育てていく。それこそが、これからの観光地経営に求められる、未来への投資ではないでしょうか。

Bing Han氏




