【失敗の法則から学ぶ~宿経営者の仕事大全59】決算書を深読みする 孫田 猛


 早いもので今年も半分が過ぎようとしています。この時期多くの経営者の頭の中をよぎるのは決算のことでしょう。

 経営者にとって決算はネガティブなイメージがつきものかもしれません。

 黒字を予想する経営者は税金の納付額、赤字を予想する経営者は金融機関からの問い合わせが気になるでしょう。

 「社長。今年度こそフル償却で営業利益はもちろん、経常利益も黒字計上を達成してください。そうでないと来年度のサポート体制に影響が出るかもしれません」と、なんとも厳しい言葉が耳に残っている方もいます。いずれにしても頭の痛い時期なのです。

 そもそも決算とは、法人税や消費税等今期の納税額を算出するプロセスですが、企業経営においてさまざまな用途で活用できる便利なものです。

 金融機関においてはそれぞれの企業評価をするための、重要な財務資料です。

 また、企業においても1年間の経営成績と、今期決算時点での財産状況を表した客観的なデータです。だから、これをもとに、次年度の経営計画が多くの企業で作成されています。

 そこで重要となるのが、決算の振り返りです。多くの経営者は、決算書を受け取ると、経理責任者や顧問税理士から説明を受けます。

 しかし経営者の関心は前述の通り黒字であれば税金。赤字であれば、赤字額と金融機関の評価にとどまりがちで、対策を協議したところで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。

 決算書は企業の通信簿です。あなたは子供のころ、通信簿の結果をどのように受け止めましたか。振り返りをすれば教科ごとに弱点が見つかり、どこを補強すべきかが分かります。

 企業も全く同じです。結果が客観的に出るのが決算書です。期首に目指した税引き後利益額と実績との乖離(かいり)額を見てください。なお期首には金額とその使い道を同時に決めておきます。

 例えば、納税額、借入金返済額、内部留保、各種投資等です。ここに差異が生じれば使い道と金額も変わってきます。

 ここに着目することはとても大事です。そして結果だけでなく、その要因を分析することが重要です。

 そこで決算書の各勘定科目別を詳細に分析し、差異が生じた原因を探ります。さらに特に影響が大きかった項目を特定し、その数字の根拠を検証します。

 この分析のポイントは各勘定科目において、数字を決定づけるものは何かを特定することです。例えば売上高であれば、宿泊売り上げであり、これはプラン別売上高(単価と数量)。経路別人数、月別売上高(単価と数量)のように、この部分の変化や数値がポイントだという箇所を、仮説としてピックアップします。次にその数字にひもづいている行動についても振り返るのです。

 これら一連の作業が決算書の深掘り作業です。とても手間がかかりますが、その効果は絶大です。

 この深掘り分析は次年度の収支計画に早速反映させましょう。収支計画を作成したら、パッケージとしてアクションプランが必要になってきます。この収支とアクションのひもづけとして、この深掘りシートをフォーマットとして使用し、次年度用に埋め込んでみてください。これが使える経営計画なのです。

 なお作成においては最初から完璧なシートを目指す必要はありません。できるところから始め、運用をしてください。これはいいものだと実感したら、さらにひもづけを増やしていこうという意識が高まってきます。

 納得して使える計画と運用のガイドラインが、決算書の深掘りを通じて作成することができます。

失敗の法則その58
 決算書が完成しても、赤字か黒字、税額にしか関心が向かない。
 その結果、せっかくの決算書が活用されないままになっている。
 そこで、決算書の予実差異についての深掘りから始めてみよう。

 https://www.ryokan-clinic.com

 
 
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