【WEBマーケティングインターネット徹底集客 362】観光インフレ時代に求められるWEB集客の視点 小林義道


 UNツーリズム(国連世界観光機構)の報告によれば、2025年前半(1~6月)の国際旅行者数は前年同期比約5%増の6億9千万人に達したと見られる。その中で日本は+21%と高い伸びを示した国の一つであり、観光収入も18%増と報じられている。インバウンド市場は拡大局面を維持し、国際的な観光需要の波は確実に戻りつつある。

 一方で、「観光インフレ」は依然として高止まりしている。観光関連費用の上昇率は2024年の8.0%から2025年には6.8%へと緩和する見通しだが、2019年の約3%前後と比べると依然として高い。世界全体の平均的な消費インフレ率(約4%台)を上回る状況が続き、生活必需品以上に旅行関連費用の上昇が顕著だ。そのため、旅行が「割高な特別支出」として慎重に判断される傾向が強まっている。

 こうした環境下で、国内の旅行者行動にも変化が見える。JTB「2025年夏休み旅行動向」によれば、総旅行者数は約7464万人(前年比0.8%増)、旅行消費額は4兆円を超える見込みと堅調だが、旅行日数では「1泊2日」が最多(36・5%)で、近距離・短期間の旅行が主流である。観光庁の調査でも「費用負担」「休暇取得の難しさ」が旅行を控える理由として上位に挙がり、旅行者の心理には「コスト」「時間」「距離」の三つの制約が色濃く影を落としている。

 この「観光インフレ時代」において、WEB集客で求められるのは価格訴求ではなく「納得価値」の提示である。料金に対し、体験や特典、安心感など”金額の理由”を明示し、顧客の心理的満足を支えることが重要だ。具体的には、宿泊後の満足度データや口コミを活用し、「なぜこの価格で選ばれているのか」を可視化する取り組みが有効である。

 さらに、地域連携型プランやジオターゲティング広告を活用した近場需要の開拓、SNSや口コミによる共感型の発信も欠かせない。UGC(利用者投稿)はAI検索にも反映され、信頼性と推奨力を高める新たな資産となるだけでなく、宿自身のブランド文脈を形成する重要な要素となりつつある。

 観光市場は量的に回復しつつあるが、消費者の価値判断はより繊細で現実的になっている。いまこそ宿泊業界は、価格を下げるのではなく、体験の質と意味をどう伝えるかに力を注ぐべきだ。WEB集客は、その価値を可視化し、共感を生み出す最前線である。

 (株式会社プライムコンセプト 小林義道)
      

 
 
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