【にっぽん銘菓の旅16】南蛮菓子の街・佐賀市(佐賀県) 外はサクッ、中はふわり「丸ぼうろ」 中尾隆之


鶴屋の元祖「丸房露」

 佐賀を歩けば「丸ぼうろ」に当たるといわれる。入学や合格、結婚、新築、法事など冠婚葬祭で何かにつけて「丸ぼうろ」を贈ったりもらったりする。だから家にはおやつ、お茶菓子、小腹満たしに困らない。製造販売店も市内に数十軒を数えるという。

 丸ぼうろは小麦粉に砂糖、鶏卵、ハチミツを練り合わせた生地を型で丸く抜き、高熱の鉄板でふっくら焼き上げる南蛮菓子。いわば分厚いクッキー、丸い形の硬いカステラである。

 飾りも模様もなく、こんがりの茶色一色のシンプルな菓子だが、外はサクッ、中はふわり。香りがよくて飽きない甘さが100年以上続く理由だろう。

 これは江戸時代、長崎警固に当たった佐賀藩士がポルトガル船員からもらって持ち帰った「ボーロ」(菓子の意)に始まる。

 この製法を学びに長崎に出向いたのは、1639年創業の藩御用菓子司「鶴屋」2代目店主。修得して「丸房露」の商標で売り出した元祖である。2度総理大臣を務め、早稲田大学を創立した同郷の大隈重信侯に大いにひいきにされた。


鶴屋の元祖「丸房露」

 その後、これを郷土菓子として広めたのが、中央大通りと長崎街道の交差点に本店を構える「丸芳露」の「北島」。江戸時代、数珠や荒物、雑穀商で御用商人に取り立てられ、明治前期に製菓業に進出した老舗である。


北島の銘菓「丸芳露」

 「外は硬め、中は柔らかめ、香ばしさと甘さのバランスが命です」と同店の香月務さん。発展形として製造したバター、鶏卵、アーモンド生地で杏ジャムをサンドした「花ぼうろ」も売れ筋商品という。

 「丸ぼうろ」が佐賀に根付いたのはなぜか? それは長崎・出島に入った砂糖が江戸に運ばれた長崎街道の途次に佐賀があって入手しやすかったことと、佐賀平野が小麦の一大産地であったことによる。

 今なお佐賀で隆盛が続く「丸ぼうろ」だが、離れた大分県中津市にもなぜか同じ「丸芳露」(重松製菓)、「丸ボーロ」(利休堂本舗)の店が10軒近くある。

 佐賀は大隈重信の出身地、中津は慶應義塾創立の福澤諭吉の故郷。「丸ぼうろの早慶戦」と面白がられている。

 (紀行作家)

 【メモ】「丸房露」=鶴屋菓子舗(0952・22・2314)10個入り税込み1080円。「丸芳露」=北島(0952・26・4161)10個入り税込み1180円。取り寄せ可

 
 
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