「また会議で同じ話をしている」「前回決めたことがあいまいになっている」「スタッフ間で認識がバラバラ」―。こうした悩みを抱えるお宿の経営者は少なくないでしょう。実は、これらの問題の多くは「議事録」という小さな習慣で解決できます。
「議事録はいつも作成しているよ」ですか。ではその議事録をお手元に用意してその中身を見てください。確認事項は次の四つです。
(1)事前準備ができているか?
会議前に議題を明確にし、参加者に事前共有しましょう。「お客さまからのクレーム対応について」「夏季繁忙期のシフト調整」など、具体的なテーマを設定することで、建設的な議論が生まれます。これら会議のテーマをアジェンダに落とし込みます。アジェンダ、会議、議事録の3点セットで運用しましょう。
(2)5W1Hを意識した記録になっているか?
「誰が(Who)」「いつまでに(When)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どこで(Where)」「どのように(How)」を明確に記録します。例えば、「田中さんが、来月15日までに、新人研修プログラムを、サービス品質向上のため、研修室で、OJTと座学を組み合わせて実施する」といった具合です。
この5W1Hをあらかじめフォーマットに落とし込んだ議事録を使用しましょう。
(3)決定事項と継続検討事項を分ける
会議ではさまざまな意見が出ますが、「決定したこと」と「継続して検討すること」を明確に区別して記録しましょう。これにより、次回会議での議題設定もスムーズになります。
この項目はとりわけ重要です。必ず分けてください。あとでこの議事録が生きるかどうかのポイントです。
(4)数値や期限を具体的に記載
「売上向上」ではなく「客室稼働率を現在の75%から80%に向上」、「早めに」ではなく「3月末まで」といった具体的な記録を心がけます。これは司会進行役の仕事ですね。あいまいなままでは会議終了後、具体的な行動ができません。
さらに議事録作成の際の留意点を三つあげておきます。これは多くのお宿の会議議事録で見受けられた共通の落とし穴です。
(1)発言者の意図を正確にくみ取る
議事録は「言葉通り」ではなく「意図通り」に記録することが重要です。方言や業界用語が飛び交うお宿の会議では、特に注意が必要です。不明な点はその場で確認しましょう。
(2)感情的な発言は冷静に整理
人手不足や人間関係のストレスから、時として感情的な発言が出ることがあります。その背景にある課題を整理し、建設的な内容として記録することが大切です。興奮して発したひとことが議事録にそのまま記載された結果、思わぬ大問題になったことがありました。司会進行役や当事者とともに冷静な対応をしましょう。
(3)機密情報の取り扱い
顧客情報や経営数値など、機密性の高い情報が議論されることもあります。議事録の配布範囲を事前に確認し、必要に応じて機密レベルを設定しましょう。出席者は普段接している資料なので、機密情報の意識が薄いケースがあります。知り合いの他館スタッフに軽い気持ちで漏らした事例や、資料を会議場所として使用したレストランに置き忘れ、お客さまの目に留まった事例がありました。
いかがでしょうか。習慣化することで必ず大きな効果を実感できるはずです。今日から精度アップした議事録作成を始めてみませんか。
失敗の法則その59
会議議事録はあるが、作成して終わりになっている。
その結果、会議での決定事項があいまいになっている。
そこで、精度アップした議事録を作成し、共有することにより、お宿運営のガイドラインとして最大限活用していこう。
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