【失敗の法則から学ぶ~宿経営者の仕事大全56】身近にいる経営のアドバイザー 孫田 猛


 お宿の経営者の皆さん。経営の実践的な勉強や情報収集はどのような方法で行っていますか。コンサルタント契約や専門的なセミナーを受講するといった方法でしょうか。いずれにしてもそれなりの金額がかかりますので、とても重要だという認識があるのでしょう。

 ではその費用対効果はどうかというと、実にさまざまのようです。そのような良き相談相手であり、自社の経営改善の方向性を示唆してくれる人は、やはり有償でそれなりの実績を積んだコンサルやセミナー講師だけなのでしょうか。

 いいえそんなことはありません。身近に存在していますよ。それはあなたのお宿が借り入れをしている金融機関です。つまり銀行や信金の支店長や担当者です。「えー」と顔をそむけたあなた。経営者の中には金融機関との関係を密に保つことに抵抗を感じている方が一定数います。その理由は自社の経営内部の情報を、必要以上に知られたくないこと。金融商品をはじめとした各種セールスがわずらわしいことなどがあるのでしょう。

 だから、一般的に決算書や試算表の提出を求められている場合では、担当者に手渡しして終わり、というとても薄いコミュニケーションしかないのです。

 気持ちはよく分かります。でもこれらの理由で身近な金融機関を遠ざけるのは、実にもったいない。金融機関の職員は旅館業界だけでなく、他業種にも精通した優秀な人材が多く、財務や金融、会計、経営の知識について研修を継続的に受けています。また、地元情報にも精通しているケースが多く、経営者への支援意欲も高い人が非常に多いのです。

 ただし、これらの方々にはこちらからアプローチしなければ必要以上のことは言ってきません。なぜなら彼らはコンサルタントではないからです。でもまとまったお金を貸す以上、これらの知識がなければなりません。

 だからコンサルフィーは不要です。無料です。それで通り一遍の知識の受け売りではなく、あなたのお宿をお金という切り口で知り尽くしている人から、個別具体的なお話が聞けるということは、とても魅力的だと思いませんか。

 ではさしあたり何から相談していけばいいのでしょうか。まずは1時間程度時間を取ってもらいましょう。訪問もしくは来館どちらでもいいです。決算書や月次試算表はもちろん、営業データ、原価表、オンハンド、月次現預金の残高等各種資料を時系列に記載した資料を用意すれば、試算表の数値の元が見て取れます。

 また、財務以外のことについても情報共有してもらいましょう。その上で気軽に質問できるような関係になれば、経営者としての知識や情報は格段に広がります。

 例えばわが宿の財務面から見た強みと弱み。目指すべき理想値とは。金融機関は決算書や試算表のどこを見ているのか。趨勢(すうせい)や傾向はどのように判断すべきか。等々について意見を聞いてみてください。そしてそれらを共有し、目指すパートナーとなってもらいましょう。

 これらは積極的に手を挙げた人のみに与えられるものです。これを定期的に活用すれば、わが宿の立ち位置や今後の方向性が見えてきます。その上で、必要に応じて有料の専門サービスを活用すればいいのではないでしょうか。

 あなたを取り巻く身近なところに、有能なノウハウと情報を持った人たちがいます。ぜひ自ら近づいてみてください。

 失敗の法則その55
 金融機関の担当者との関係を、資料のやり取りだけにとどめている。
 その結果、有益な情報を収集できず、財務的な方向性を見失っている。
 だから、金融機関の担当者を月に1度、わが宿に招き入れて相談することから始めよう。
 https://www.ryokan-clinic.com

 
 
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